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資格活用への取組み

消費者志向経営を実践できる社員の育成を目的として、資格取得を推進しています

アスクル株式会社 リーガル&セキュリティ本部 広告表示審査部門

アスクル(株)は、1993年に「明日来る」ことをお約束した社名で、事業所向けの通販サービスを開始、2012年には個人向け日用品サイトLOHACOでの通販サービスを開始しているEC企業である。同社では、消費者庁の消費者志向経営自主宣言・フォローアップ活動と消費生活アドバイザー資格の取得推進の事務局を広告表示審査部門が担当する。どのように取り組んでいるのか、東京都江東区の豊洲本社にてお話をうかがうことができた。

■なぜ、広告表示審査部門なのか

 「令和2(2020)年度令和4(2022)年度の消費者志向経営優良事例表彰を受賞されていますね」と話を切り出すと、
「2020年当時、社外取締役だった高巌氏からアスクルとしてぜひ取り組むよう勧められました。当社としてもお客様向けの取組みに対しスポットライトを当て、大義を与え原動力にすることができると考えて応じたものです」
 横田道生セキュリティ・広告表示審査統括部長より説明があった。
「そこで、消費者庁の動向が業務に直結している当部門が事務局に手を挙げました」

 令和2年度の表彰は、コロナ禍において医療関係者に必要な物資を供給するシステムを構築し実践した点などが評価され、令和4年度は、Go Ethicalにより賛同企業20社とともに商品に問題がないにもかかわらず従来は廃棄処分されていた商品について理由を明示して販売し廃棄削減したことなどが評価され、受賞に至っている。

 アスクルは2021年7月より「消費者志向自主宣言」を策定し、消費者志向経営に取り組んでいる。広告表示審査部門はその事務局であり、年度ごと(!)にフォローアップ報告書の形で取組みを取りまとめ、コーポレートサイトで公表している。消費者庁の表彰への応募は、その際に集まった優良事例から選別されたものである。

 毎年、フォローアップ報告書を作成している企業は少ないのではないだろうか。
 この報告書作成の中心となっているのが、板東可子さん(消費生活アドバイザー)だ。
 「正直、最初はたいへんでした。とりまとめは全員で分担して収集しました。他部門に負担をかけたくないので、できるだけすでに発表されているKPIなどを集めて作成しています。縁の下の力持ちのような当部門の活動を社内にPRするよい機会だと思っています」

 もちろん同社でも、コールセンターでお客様との応対を担当するCS & E(engagement)をはじめとする様々な部門が、消費者を大切にした取組みを実施している。こうした部門が、消費者志向経営推進の事務局を担当する企業が圧倒的に多い。
 「広告表示審査部門は、広告表示という観点から社内を横断的に見ることができますので、社内のとりまとめ役に適しています。また、消費者庁をはじめとする行政に『アスクルってこういう会社なんだ』とぜひ知っていただきたいという狙いもあります」(横田統括部長)

 では、同社の広告表示審査部門とはどのような部署なのか。
 リーガル&セキュリティ本部におかれ、いわゆる法務部門の一部門である。社員6名(うち兼務4名)、派遣スタッフ1名で運営されているとのこと。現在は、ほぼテレワーク勤務となっている。
 業務内容は、

  • ・広告・景品を規制する法令に関する社内コンサルティング
  • ・社内順守状況の監視・監督、是正に関する指示・指導

 が中心であり、景品表示法が定める「表示等管理担当部門」としての業務を担っている。

 コンサルティングなどの対象は、Webでの商品説明文、バナー、特集ページの表記のほか、カタログ、商品同梱チラシ、FAX、DM、キャンペーンやアンケートの景品企画等である。また案件があれば、プライベートブランド(PB)のパッケージに記載されている広告や、新聞・ラジオ広告、テレビCM、YouTubeの動画もチェックする。
 すなわち、社外へ発信される様々な広告が、この部署によって審査される。

●調査の2つのルート
 調査には、大きく2つのルートがある。
 一つは依頼に基づく調査であり、販促企画担当者から、販促のWebページやチラシなどのチェック依頼を社内システム経由で申請してもらい、その内容に基づいて調査・確認を行う。
 依頼される分量は様々であるが、年間約300件とのこと。

 もう一つは、特にチェックの依頼がなくても行っている自主的な調査であり、Webやカタログに掲載する商品情報について一定の確認を行っている。また、特定のテーマを設けて確認を行う場合もある。
 たとえば食品や飲料は人体への効果効能がうたわれやすいので、商材や効果効能に関する表現をピックアップし、チェックを定期的に行ったり、消費者庁が違反事例をプレスリリースした他社事例について、同様の事象が自社にも起こっていないか、必要に応じて確認を行っている。

●調査体制
 個別の販促物チェックは全員で分担し、基本的に、依頼の順番に均等割りにしている。メンバー各自の専門分野を設けると作業量が均一にならないためである。部内でチェック内容が標準化されていくことも期待できる。

 「テレビCMなどのマス広告は部内全員で行うようにしています。そのほうがいろいろな意見が出てきますから。今は『法律を守っていればいい』という時代ではなくなってきています。消費者目線でのちょっとした気づきで『このようにしたほうがいいのではないか』と添える場合もあります」(横田統括部長)
 こうして出された意見は、制作を担当する部門にフィードバックされ、検討・反映されていく。

 チェック時間がどれくらいなのか、気になるところである。
 「部門の基準としては、A4サイズ1枚で1日が目安です。依頼があった時にA4何枚分かを聞いて、それに合わせて日数を伝えていますが、『できるだけ早く』と、翌日には戻せるような勢いで仕事を回しています」
と、田村留加さん(消費生活アドバイザー)。

 続けて、横田統括部長より
 「私たちの部門は販促の最終段階ですので、ここでせき止めておくと全体行程に影響が出てしまいます。そこで、基本的なことは事前に当たり前のこととして知っておいていただくようにしていまして、ある程度完成したものを出してもらうようになっています。そのほうが、依頼する側 / 受ける側、お互いにとってメリットがあると考えています」
 こうしたことにより、大きな書き換えが必要なものはほぼなく、担当者に表現を再検討してもらう程度になり、「そのままでOK」も多い。
 「販促担当者に少しずつ知識を蓄積してもらいたくて、『こういうルールがあるから、これはだめなのですよ』と、チェック時のコメントにも根拠を記載するようにしていて、その意図を受け止めてもらえている気がします」(田村さん)