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資格活用への取組み

●マニュアルを社内公開
 ここで威力を発揮しているのが、ポイントをまとめたマニュアルである。
 広告を規制する法律を扱う仕事は概念的であり、明確かつ具体的な基準を置いておかないと、個々人で判断にブレが生じるリスクがある。そこで、マニュアルに判断基準を明記し、その内容に従って業務を行うという方針がとられている。
 マニュアルは数十本あり、すべて社内公開されている。したがって、広告表示部門にチェックを依頼する部門がこのマニュアルに沿って作業していれば、大きな問題は防げることになる。
 修正の指摘箇所については、「次に見落とさないようにするにはどうすればよいか」との観点から、積極的にアップデートされている。また、社員として覚えておくべきことはe-learningを通じて習得を促している。

 コロナ関連のマニュアルを見せていただいた。表記例ごとにOK / NGを示す簡単な表形式にまとめられ、いたってシンプル、そして短い。1枚目はエッセンス、2〜3枚目に具体例を示して、終わり。薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に関係していることから、弁護士にも確認し社内基準として作られたとのこと。
「行政文書の目的と私たちの文書では目的が違うと思うのですね。私たちが作る文書は、できるだけ具体的に『これはよい / これは悪い』と示さないと、みんなにわかってもらえません」(横田統括部長)

●取引先の表示審査も
 取引メーカーに表示修正を依頼したり質問することもある。
 取引先から商品情報の提供を受け、もし疑問に思うようなことがあった場合は、事実確認を行う。そのうえで、そのまま掲載することが広告を規制する法律上の問題となるおそれがある場合は、修正依頼することもある。
 取引先に認識の誤りがあった場合に、今後の注意や改善をお願いしたことが、ごく限られたケースだが、あったそうである。

●パブリックコメントへの応募
 法律やガイドライン等の改正に伴って行政がパブリックコメントを募集した時は、広告表示審査部門として必要に応じて意見を提出している。
 「必要に応じて」というのは、同社が業務を遂行するうえで、「この点があいまいなことが、実務上論点になるのではないか」「業界として、この点はこのように書いていただくことを期待する」といった意見をもった場合である。
 「パブコメへの応募は、改正の内容を深く勉強でき、キャッチアップすることができますし、行政と一緒にルールを作っていくような面白さがあります。読み込みの腕だめしにもなりますね。やらないともったいないぐらいです」(横田統括部長)

●専門知識のアップデート
 消費者庁のサイトは常にウォッチして情報を入手するようにしている。
 法律やガイドライン等の改正の予定を入手した際は、担当者を決めてマニュアルの更新を行うことをタスクとして実施している。担当者は、部内に回覧して意見交換を行ったうえでマニュアルを更新し、社内公開する。
 また、アスクルは(公社)日本通信販売協会(JADMA)や(公社)日本広告審査機構(JARO)の会員企業であり、そうした機関から法律やガイドライン等の新設や改正の予定の情報提供を受けることもある。

 「アップデートは日々の情報収集の積み重ねです」と、沼本勝哉さん。「ニュースを見たり消費者庁のホームページなどを見て、世の中がどう変わっているのか。それを基にマニュアルを修正したり、新しい視点を取り込んだり。変化をとらえるようにしています」

●ダイバーシティ、サステナビリティへの取組み
 近年は社会の意識変化に対応した広告表示が求められるようになってきている。
 アスクルにはダイバーシティやサステナビリティの普及にあたる専門部署があり、そこから発信や教育を受けているほか、人事部による研修も行われている。
 また、広告分野でジェンダー等の配慮への懸念が生じた際は、個別に、相談や事例が蓄積されているJAROに相談している。

 「最低限守るべき法律の部分は、すでにマニュアルにまとめ、仕組みとして組み立ててきています。さらにプラスアルファとして社会から要請されているものもあると考え、ダイバーシティの観点をどう具体化していくか、今まさに取り組んでいるところです。正解のない世界なので、会社としての考え方をどうまとめるか、ですね。目下の課題だと思っています」(横田統括部長)
 いずれはコロナ対応のマニュアルのように文書化されていくのかもしれない。


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