機能性食品の研究開発においてもお客様視点が重要です。どうすれば情報の非対称性を解消できるか、常に考えていました。
滝井 寛(ひろし)さん(消費生活アドバイザー33期)
江崎グリコ株式会社 グリコお客様センター リーダー
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機能性食品の研究開発においてもお客様視点が重要です。どうすれば情報の非対称性を解消できるか、常に考えていました。
滝井 寛(ひろし)さん(消費生活アドバイザー33期)
江崎グリコ株式会社 グリコお客様センター リーダー
30年近く研究開発部門で仕事をされてきたんですね。
滝井 はい。大きく分けて3つの商品の素材開発から機能性試験の実施、特定保健用食品(トクホ)などの商品化に関わりました。
1つは、自社開発したデキストリン(デンプンの分解物)の用途開発と「CCDドリンク」というスポーツドリンクへの商品化に関する研究です。CCD(クラスターデキストリン)をスポーツドリンクに入れることで、胃から速やかに小腸に送られ、吸収されることをヒトボランティア試験で明らかにしました。
この研究をまとめ上げるなかで、私の研究者人生の基礎を築くことができたと感じています。この開発に関わった知見を論文にまとめたものが認められて、博士論文を執筆することができました。
2つめは、自社開発した高水溶性カルシウム(リン酸化オリゴ糖カルシウム:POs-Ca)素材のガム製品への応用研究です。こちらもPOs-Caの用途開発の一環として、実験的に初期むし歯を発生させた歯への再石灰化(初期むし歯回復効果)を検証しました。
検証にあたっては、カルシウム成分の回復だけでなく、回復部位が歯の結晶のハイドロキシアパタイトと同じ状態であることも、世界で初めて検証しました。
この検証は兵庫県のSPring-8(スプリングエイト)という世界で3箇所(当時)しかない大型放射光施設で実施しました。施設は世界の研究者が使用申込みをするため審査があり、かつ利用時間が限られていました。限られた時間内に実験を終えるために徹夜で実験に取り組みました。当時は若かったのでなんとかなりましたが、今では難しいかもしれません。
実は再石灰化した部分が結晶に回復しているかという検証は世界の歯科界で行われたことがなく、世界初の成果でした。この成果をもとに、「POs-Ca(ポスカ)ガム」を、トクホに申請し、国に表示許可をいただきました。その申請手続きや消費者庁とのやり取りを私が中心となって対応しました。
3つめは「朝食BifiX(ビフィックス)ヨーグルト」の機能検証と機能性表示食品申請です。「POs-Caガム」のトクホ認可を得た後、ちょうどヨーグルトチームから「朝食BifiXヨーグルト」の機能性を訴求したい、という相談がきました。
当時「朝食BifiXヨーグルト」は「おなかで増えるビフィズス菌」というキャッチコピーで「朝食BifiXヨーグルト」を販売していましたが、機能性が伝わっていませんでした。そこで、いかに機能性をお客様にアピールするか一緒に考え、当時スタートした機能性表示食品に申請することを提案しました。そのまま、部署異動となり、新たに発酵乳の研究メンバーと整腸作用に関する試験を計画・実施することになりました。
こちらも、意図した結果が得られ、グリコで初めてとなる機能性表示食品の根拠データとすることができました(現在、「朝食BifiXヨーグルト」は「BifiXヨーグルト」に名称変更され、一般食品として販売されています)。