江崎グリコの研究開発部門について、簡単にご説明願います。
滝井 グリコグループが「存在意義(パーパス)」として掲げる、お客様の「すこやかな毎日、ゆたかな人生」をサポートできるよう、さまざまな健康課題に対して研究を行っています。現在顕在化していたり、今後顕在化が予想される社会課題の解決への貢献を視野に、研究が推進されています。
基礎研究から応用研究、商品技術開発まで、各チームが協働して行っているんですよ。
2021年の農芸化学技術賞を受賞されています。
滝井 健康科学研究所(当時)で釜阪 寛さんと田中智子さんとともに行った「歯の修復およびその加速化に関する革新的技術開発」が評価され、受賞できました。
この研究では、素材開発と技術開発の両方を行いました。素材開発から数えると、現在で25年以上の歳月が経過しています。
25年以上ですか!
滝井 POs-Ca素材の開発を共同受賞者の釜阪さん(現在、甲子園大学栄養学部教授)が開始してからです。私は2000年頃から始まった技術開発(ヒトボランティア試験等)から研究に参画しましたので、20年超です。
SPring-8での実験は、一度失敗すると半年先しかできないし、それも審査をパスする必要があるし、万全の準備が必要でした。トクホの申請計画、商品発表等の営業計画に大きく影響するので、ミスできないプレッシャーがすごかったです。測定方法もSPring-8の先生方と何度もディスカッションして組み上げました。実は測定方法だけでも学術論文になったくらい、先進的な取組みでした。
現在は「POs-Ca」ガムのほか、歯科医院用に「POs-Ca F (ポスカエフ)歯科用」ガムという、緑茶フッ素成分も加えたガムも販売しています。こちらのほうは着実に売り上げを伸ばしています。
POs-Ca F(ポスカエフ)歯科用<ペパーミント>

研究・開発の視点とお客様の声とは乖離することも?
滝井 お客様と研究開発側では、もっている情報量が違いすぎます。研究開発側は膨大な情報をもっていますが、お客様はその反対です。
この情報の非対称性をどのように解消してゆけばよいか、研究開発では常に考えていました。どうしたら健康課題について自分ごとにしてもらえるかが、機能性食品を手にとってもらうのに決定的に重要であると感じました。