試験勉強はどのように?
川上 通信講座の利用に加えて、日本経済新聞や『くらしの豆知識』などから、少しずつ情報を積み上げることを心掛けました。今まで接することのなかった、住生活や企業経営に関することなどは、ひたすら通信講座のテキストを読み、勉強しました。
先ほどのボールペンの芯についてのエピソードは、第2次試験の面接の際、受験の動機としてお話ししました。
緊張しましたが、この資格に対する思いを伝えたいと力を込めて話したことを覚えています。
最近のボールペンは改良が進んでいるので、様子が違うと思います。もし今の時代に事務用品店に勤務していたら、私は消費生活アドバイザーになっていなかったかもしれません。
その後、目標としていた北海道経済産業局で働くことができたわけですね。
川上 すぐ、というわけにはいきませんでしたが。
初めての消費生活アドバイザー更新講座で、隣の席に座っていた方が話しかけてくださり、いろいろお話をしているなかで、「経済産業局で仕事がしたい」との希望を打ち明けたところ、「そこで働いている人を知っているから、紹介しましょう」と、なんと、その場で紹介してくださいました。
その方から名刺をいただきましたので、ご挨拶できたお礼のはがきをお送りしたのですが、後日それがきっかけの一つとなり、経済産業局の相談員になる、という目標がかないました。
更新講座がきっかけとうかがい、うれしいです。行政の委員としても活動されています。
川上 はい。(公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)北海道支部の運営委員になった頃から、そのような機会をいただいています。
最初はどうしてよいのかわからず、行政をはじめ幅広い分野で活躍されている消費生活アドバイザーの大先輩に相談したところ、「1回でいいから会議中に発言しなさい」とアドバイスを受けました。
初めて参加する会合で、挙手をして発言するのは勇気が要りましたが、NACSや消費生活アドバイザーの代表として参加するのだと思うと、もじもじしてはいられません。そう考えながら資料を見ていると、不思議と発言したい点が見えてきます。そうした経験を積み重ねることで、少しずつ委員会の雰囲気に慣れていったように思います。
特に記憶に残っているのは、北海道財務局での金融行政アドバイザリーです。
私以外のメンバーは大学教授、中小企業診断士、会社社長などで、消費者の立場での参加は私1人です。初めての個別ヒアリングでは、場違いのところに来てしまったと、冷や汗が出ました。
でも、このまま委縮していてはこれまでこの仕事を引き受けてきた先輩たちに顔向けができません。アドバイザー仲間の自営業者に話を聞いたり、金融政策に関する新聞記事をスクラップするなど知識を広める努力をしました。もちろん私の役目は消費者の立場からの観点ですから、そのための準備も力を抜けません。
私が金融行政アドバイザリーだったのはちょうど振り込め詐欺が社会問題化していた時期でした。会議のときに、他県での金融機関での取り組みを扱った新聞記事を紹介しながら発言したところ、他のメンバーの方も関心を示してくださり、財務局の方も「局内で情報を共有したい」と言ってくださいました。少しは役割を果たせたのではと思い、うれしかったです。
現在NACSでは、金融委員、北海道支部ICT自主研究会に所属しています。
コロナ禍で制限はありますが、オンライン会議システムを利用して、活動しているところです。
相談業務で悩んだときに、オンライン会議やメーリングリストを利用して消費生活アドバイザーの仲間に相談できることを、大変心強く感じ、感謝しています。
今後の抱負などを。
川上 私は消費生活アドバイザーの「消費者と企業や行政の架け橋」という役割に大きな意義を感じています。
これだけ情報があふれる時代でありながら、企業・行政と消費者の情報格差は埋まっていません。しかも、このコロナ禍で、「自分は取り残されているのではないか」と、誰にも相談できずに不安を感じている消費者も多いのではないでしょうか。
そのような時代だからこそ、「架け橋」の役割は、これまで以上に重要だと考えています。
これまで、たくさんの方に励ましや教えをいただきながら、消費生活アドバイザーを務めてきました。
自分自身が、あとどれくらいの間、世の中の変化についていけるのかを意識する年齢になりましたが、消費生活アドバイザーの仕事を追いかけながら転職を重ねてきた自分の職歴をどのように仕上げられるか、緊張と楽しみをもって励んでいきたいと思います。
(取材:2021年1月29日)
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