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活躍する消費生活アドバイザー

川上 真智子さん

相談者の変化へのモチベーションを高める家計改善支援を目指しています

川上 真智子さん(消費生活アドバイザー23期)
札幌市生活就労支援センターステップ 家計改善支援員

事務用品店勤務を経て、2004年に北海道経済産業局の消費者相談室に勤務、2007年に同局の特定商取引執行専門職員。その後、北海道財務局多重債務相談窓口等での勤務を経て、2020年4月より現職。この間、北海道消費者苦情処理委員会委員、北海道消費生活審議会委員、北海道財務局金融行政アドバイザリーなどを務める。
「原点は消費生活アドバイザー資格。これからも大切にしたいと思っています」

家計改善支援員としてのお仕事について、簡単にご説明願います。

川上 私は札幌市生活就労支援センターステップに勤務しています。ここは、生活困窮者自立支援制度に基づいて、札幌市が設置した自立相談支援機関の相談窓口で、センター長、主任相談支援員、相談支援員22名、就労支援員6名、家計改善支援員1名で仕事をしています。
 札幌市では2019年(令和元年)10月から家計改善支援事業を行うようになり、私は2020年4月からこの業務の担当です。
 まずは相談に来られた方の家計状況を「見える化」して根本的な課題を把握します。その方の生活スタイルを尊重しながら、一緒に家計の見直しなどを行い、自分で家計が管理できるようになるのが目標です。そのために状況に応じて支援計画を作ったり、関係機関へつないだり、必要に応じて貸付のあっせんなどを行って、できるだけ早い生活再生を応援します。

生活困窮者自立支援制度は2015年のスタートでしたね。

川上 そうです。この制度に基づく自立相談支援機関は全国にあって、生活全般の困りごとの解決をお手伝いしています。
 たとえば「働きたくても働けない」「住むところがない」「借金がある」といった相談に対し、一人ひとりの状況に合わせた支援プランを作成して、相談者に寄り添いながら、他の専門機関と連携して、解決に向けた支援を行う、という流れです。
 自立相談支援の内容には、住居確保給付金の支給、就労準備支援、家計改善支援、子どもの学習支援、一時生活支援があり、地域の実情に合わせて導入されているので、自治体によって違いがあります。

新型コロナウイルスの流行により、支援センターへの相談が増えたのではないでしょうか。

川上 昨年4月からは、コロナウイルス感染拡大の影響で離職・減収した方たちを対象に、家賃相当額(上限あり)を自治体から家主または管理会社に支給する、住居確保給付金申請の対応に追われました。
 昨年4~5月の2カ月で、例年1年分の問合せを受けました。電話は鳴りっぱなし。センター内には「電話が通じないので、直接窓口に来た」という方たちであふれ、文字どおりの大混乱でした。
 膨大な業務量に加えて、頻繁に変更が加えられる制度についていくのも大変でした。今も多忙さは変わりませんが、住居確保給付金以外の相談も少しずつ動きはじめています。

 家計に関する問題としては、やはり「コロナ禍で収入が減り、生活が苦しい」という相談が多いです。
 「夫の収入が下がってしまい住宅ローンが払えないが、金融機関との話し合いがうまく進まない」という方には、問題点を整理して、業界団体に相談することを提案しました。そこで交渉の仕方のアドバイスを受け、無事に話し合いがまとまったという事例がありました。
 また、求職活動中に住居確保給付金の申請をした方が、多額の借金を返済中だとわかったことがあります。自己破産をお勧めしましたが、元来の真面目さ、家族との関係からなかなか踏み切れず、何度か話し合いを重ねました。そのうちに少しずつご自身の考えを打ち明けてくださるようになり、しばらくしてから「弁護士に自己破産手続きを依頼した」との報告がありました。
 「ここで説明を聞かなかったら、借金の整理をするなど考えもしなかった。話を聞けてよかった」との言葉を聞いて、時間はかかったけれども、納得できる解決策にたどり着けてよかったとほっとしました。
今後雇用状況の悪化などで、全国の相談窓口がますます忙しくなるのではないでしょうか。

 相談業務全般にいえると思うのですが、相談者が抱えている問題を整理した後には、その状況を克服するための何らかの変化が必要です。
 時としてそれは痛みを伴いますので、相談者が勇気を出して「変わりたい」と思えるよう、モチベーションを高めていくことが相談員の課題だと考えています。
 「正論は人を傷つける」といいます。それでも、状況を変えるために、直面しなければならないことがあるのも事実です。
 どのような方法でお伝えすることが相談者にとって受け入れやすいのか、日々模索しているところです。