経済産業局で消費者相談にもあたられていました。
川上 北海道経済産業局では、2004年10月から3年間を消費者相談室の相談員として、2007年9月からの2年間を特定商取引執行専門職員として勤務しました。
消費者相談室は、当時経済産業省が所管していた特定商取引法・割賦販売法などについて、消費者からの問合せに対応します。北海道内の消費者センターなどからの問合せもありました。
その後の仕事は、特定商取引法の違反行為を行う事業者を調査するものでした。
全国の経済産業局消費者相談室や各地の消費者センターに寄せられる相談から、法律に違反しているおそれのある事業者について調査し、必要な場合はさらに詳しく調べて、問題がある場合は行政処分手続きに入るという業務です。
このときはチームで活動していましたので、話し合いを重ねながら法律を解釈し、資料をまとめていく仕事の進め方は大変貴重な経験だったと思います。
消費生活アドバイザーを取得されたきっかけは、どのようなことでしたか。
川上 30代になり、今後仕事を続けるうえで、何か力になる資格を取りたいと考えていた頃のちょっとした出来事がきっかけでした。
その頃は事務用品店に勤務していまして、ボールペンの芯について、「インクが残っているのに書けなくなった」との苦情が気になっていました。
筆記具メーカーの担当者から、「苦情があったら交換してあげて」と言われていたのでそうしましたが、あるとき、その担当者に、「インクが出なくなるのは、製品不良なのですか」と質問したことがあります。すると、「そのような場合もあるが、ほとんどは使い方のコツをつかめば使い切れるもの」と説明され、驚きました。
「ペン先についている繊細な小さなボールは、強い筆圧や落下などの衝撃で壊れてしまうことがある。また、長く使っていないとボールの先についた紙の繊維くずのようなものがインクの粘度で絡まってしまい、そのままボールが回らなくなってしまうことがある。
それを防ぐには、ペン先に圧力をかけないこと、しばらく使わないときには時々クルクルとペン先を動かすように落書きをして、インクが繊維くずと絡まって固まらないようにする。
これらのことに気を付けると、最後までインクを使い切れることが多い」
とのことでした。
私は専門的な情報を手にいれた気分になり、ボールペン芯で困っているお客様にお伝えして、小さな満足感を得ていました。
でも、よく考えてみると、高価ではないものの、これだけ広く使われている商品なのに正しい使い方を知らない人が多いのは何かおかしい、と思うようになったのです。
「ボールペンの正しい使い方が消費者に広く伝われば、気持ちよく使い切ることができる。そして情報を提供したメーカーを信頼するようになるので企業イメージがよくなる。企業と消費者のコミュニケーションがもっとスムーズになれば、皆が満足できるのに」
と、人生ではじめて、企業と消費者の距離を意識しました。
そんな時期に、何気なく見ていた、さまざまな資格を紹介する雑誌で、「消費者と企業や行政の架け橋」というキャッチフレーズが目に留まりました。
これが消費生活アドバイザーとの出会いです。あまりのタイミングの良さにぐっと関心が高まりましたが、私が身に着けたいのは今後の仕事を支えてくれる資格です。「この資格はどうなのだろう」との疑問が浮かびました。
その疑問を解消するため、職場の昼休みに、近所にあった札幌市消費者センターに行って、「消費生活アドバイザー資格に興味をもっていますが、仕事に役立つでしょうか」と相談しました。
昼休みにもかかわらず、丁寧に対応してくださったセンターの方は、「ぜひ勉強してほしい。絶対に生活の役に立ちます」と励ましてくださいました。
「でも、すぐ仕事がみつかるかどうかはわからない。北海道経済産業局で仕事ができるととても勉強になるけど、なかなか空きがなくて、就職しにくいの」とも話してくださいました。
それを聞いた私は無謀にも、「北海道経済産業局で仕事をすることを目標にしよう!」と決意したのです。今考えると、「勉強になる」という言葉に魅力を感じたのだと思います。
後日、委員として出席した北海道消費者苦情処理委員会で、資格取得を励ましてくださった消費者センターの方との再会を果たし、感慨が深かったです。