改善や品質向上への取組みの成果を感じられることはありますか。
川口 取り組みはじめた頃は、お客様から寄せられる声にひとつずつ応えて改善してきました。
「開けにくい」という声に応え、包材も変えてきました。「読みにくい」という声に応え、ユニバーサル・デザインフォントに文字を変えたり、イラストを入れたりしてきました。「ピザを切るのが面倒」との声に応え、切れ目を入れました。
改善をしてその効果検証をするサイクルを何周も回し、近年は、新たに改善すべき大きな課題はほとんどなくなってきています。
デリ商品事業部のCSの取組みを全社に波及させようと、ニッポンハムグループの従業員大会やCS担当者会議でも当事業部の取組みを紹介しました。2013年からは、当事業部のパッケージチェックのルールの運用業務をお客様サービス部に移管し、全社の統一ルールに形を変えています。
包材チェックも、現在は社内のデータベースで管理し、担当者間で共有できるようになっています。これにより、過去の指摘も振り返ることができ、情報を蓄積することができました。
おかげさまで、私たちのCS担当チームは、ニッポンハムグループの2012年度優良事業所表彰の有功賞をいただきました。名称の通り事業所が対象の賞ですので、プロジェクトの受賞は異例です。みんなで一所懸命取り組んできたことが会社から大きく評価され、うれしかったですね。
ご自身としては、2013年の消費者支援功労者表彰の内閣府特命担当大臣表彰を受賞されています。
川口 日本ヒーブ協議会より推薦いただきました。自社での商品の改善を中心としたCS推進の「安全・安心の確保のための実践活動」と、適格消費者団体 消費者支援機構関西(KC's)や関西消費者協会など他団体との連携による消費者利益の拡大に向けての活動が評価され、賞をいただきました。本業で賞をいただけたことにより、メンバーとも喜びを分かち合うことができ、今後の励みとすることができました。
日本ヒーブ協議会には2005年に入会し、自主研究会活動や関西支部の運営委員、2008年には関西支部長、2013年には設立35周年プロジェクトのサブリーダーをしてきました。2015年の本年度は代表理事をさせていただいています。
ここでの活動の大きな転機になったのは、2006年に参加した「食育とリスクコミュニケーション研究会」のヨーロッパ研修でした。食品関連の企業の方々が、早起きして一緒にベーカリーレストランや市場に行き、商品を買い集めて、ホテルの部屋で情報交換をしたのです。これにはとても驚きました。同業だろうと異業種だろうと、目的が合えば一緒に行動して互いに学び合う集まりが日本ヒーブ協議会なのだと気付いて、そこからぐっと入り込みました。
日本ヒーブ協議会は、設立30周年の2008年に「日本人の生活力を考える」をテーマに「生活者と企業のギャップ」について研究を行いました。
さらに設立35周年の2013年には、その考えを発展させ「お客様の声を活かした取り組み55事例」の作成に取り組みました。
2015年度の活動テーマは、「社会の変化をとらえ、企業の中から社会へ~生活者視点で学び、考え、行動し、発信する~」を掲げています。4人に1人が65歳以上の高齢者という人口構造の変化に伴い、企業に寄せられるお客様の声は質・量ともに年々変化し、その対応にも変革が求められています。
高齢者対応が多くの企業において避けては通れない課題となるなか、企業と生活者の両方に軸足を置き、双眼をもって考え、行動できる日本ヒーブ協議会がこれらの課題に向き合うことに対するニーズはとても大きいと感じています。
あわせて、今の時代に求められる生活者視点・ヒーブ視点とは何かを追求し、会員が自社で活かせる学びの機会を積極的に創出し、会員一人ひとりのキャリアアップを図れるような活動をしたいと思います。
日本ヒーブ協議会の活動からは、企業の中だけでは生まれない生活者視点の発想を得ることができます。この視点で学んだことを企業の事業活動に活用し、より良い社会に変えていく。日本ヒーブ協議会には、そういう使命があると考えています。
社外活動としては、この日本ヒーブ協議会のほか日本消費者教育学会、(公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)、KC's、消費者力支援研究所などにも参加させていただいています。これらを、個人の知識にとどまらず現場に近い事業部にいて、業務に活かすことに意義があるのだと思い、積極的に活用しています。