CSは、お客様サービス部が担当しているのかと。
川口 ニッポンハムグループでは、お客様サービス部がグループ全体のCSを推進しています。各現場での取組みとして、各事業部・各グループ会社でもCSを推進しています。私は、デリ商品事業部のCS担当です。
② お客様の声をもとにした、商品の改善や品質向上としては、次のような活動を行っています。
・各工場で月1回、品質向上委員会を開催
この品質向上委員会では、FT-CCP(Fresh & Tasty Critical Control Point)が製造現場で守られているか、さらに品質を向上させるにはどうしたら良いかを議論しています。
FT-CCPは、ニッポンハムグループが独自に行っている「鮮度と美味しさの重要管理項目」です。お客様が期待される商品特長(鮮度と美味しさ)を実現するために、特に重要な製造工程中のポイントがあります。このポイントを数値化し、厳密に管理することで、安定した美味しさを実現することができます。
・週1回のお客様の声ミーティング
お客様サービス部と品質保証部、営業の品質保証課、事業部のメンバーで、前週のお客様からの問合せ内容を分析して改善すべき課題について議論します。ここで上がった課題は、ブランドマネージャーや工場に改善依頼をして、その進捗をフォローしています。
・お客様対応支援
お客様サービス部のメンバーに対して新商品の勉強会を定期的に開いて、商品に関する情報を共有しています。また日々、お客様からの問合せへの返答のフォローもしています。
・包材(パッケージ)の表示のチェック
表示や調理方法・ご注意などの記載方法のマニュアルを作成し、お客様の声をもとに年2回改訂しています。そのマニュアルに基づき、新商品やリニューアル商品のパッケージの作成時にお客様視点でチェックをしています。
③ お客様に商品の良さや特長を知っていただく活動としては、事業部が担当しているホームぺージ「モアデリシャス」サイトの企画・運営を行い情報発信をしています。また、そのサイト上でお客様のニーズ調査や、商品を送付して回答いただくモニターアンケートなどを行い、収集した情報を関係部署と共有し、新商品のアイディアや商品改善のヒントにしてもらっています。
その他、商品の特徴をお客様に知っていただくための店頭POP等の作成も行っています。
川口さんは、商品開発担当からCS向上推進の担当になられたんですね。
川口 はい。私はCSを担当する前、16年間ブランドマネージャーとして商品開発に携わっていました。マーケティングをして、商品を立案し、工場のメンバーと一緒に商品づくりをしていました。そのため、製造ラインや商品設計、そして開発者の想いや製造現場の動き方もよくわかります。
そうした経験もあり、CS向上推進の担当に任命されました。その時、上司に「目標は、自分が必要でなくなること」と言われ、社員全員がお客様視点で仕事をするCSマインドの醸成が私のミッションと考えて取り組んできました。
まずは、お客様の声を商品・内容ごとに分析して、改善依頼を行うことから始めました。そして、積極的にCSを推進している企業を20社近く訪問させていただき、良いと思った取組みを当社風にアレンジして取り入れて作ったのが、現在の仕組みです。
お客様の声をどのように改善依頼していかれたのでしょうか。
川口 たとえば、お客様からの「調理方法の説明がわかりにくい」「注意書きに書いてあるけれど、読まなかった」といったお問合せの場合、商品の不具合や法律的な問題ではありません。
かつては、明白なルールがなく、「書いてあるのだから問題ないのでは」「スペースも限られているし、仕方がない」という認識もあったりし、担当者によって対応にバラツキがありました。
そこでCS向上活動では、法律上の義務とされている表示は当たり前として、「記載方法がわかりにくい」「お客様が勘違いしてしまった」といったお客様視点からの課題に特化して取り組みはじめたのです。
ルールを決めて、新製品やリニューアルのタイミングに合わせて変更してもらい、表示を統一しました。
「別添のタレやドレッシングに調理方法を書く必要があるのですか」「書いてください」
「商品にかけるに決まっているじゃないですか」
「それでも、書いてください。せっかく一生懸命作った商品なのですから、お客様が失敗しないように書いて、美味しく食べてもらったほうがよいですよね」
そんなやりとりを繰り返し、「この項目は必須。ただし、スペースがない場合は、このようにする」というルールを作っていきました。すると、しだいに、それが当たり前になっていきました。