活躍する消費生活アドバイザー
金融商品取引業者の顧客からの相談や紛争解決委員の補佐にあたっています
三原 文乃さん(消費生活アドバイザー20期)
特定非営利活動法人 証券・金融商品あっせん相談センター 相談員
市川市消費生活センター、千葉県消費生活センターを経て、2006年~2018年に金融庁金融サービス利用者相談室に勤務。この間、産業能率大学総合研究所やNACSにて、消費生活アドバイザー受験対策講座の講師を15年間務める。2018年に特定非営利活動法人 証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)に相談員として勤務、現在に至る。2023年より鎌倉女子大学非常勤講師。J-FLEC認定アドバイザー。消費生活アドバイザーの有志の団体であるサステナビリティ消費者会議の一員として、持続可能な社会の実現のために消費生活アドバイザーの視点で発信も行っている。
ゴスペルが趣味。「音楽フェスなどでも歌っています」
FINMACについて、簡単にご説明願います。
三原 証券・金融商品あっせん相談センター(略称:FINMAC、フィンマック)は、株や投資信託、FXなど金融商品の取引に関するトラブルについて、金融商品取引業者の顧客から相談や苦情を受け付け、公正・中立な立場で解決を図る金融ADR機関です。
法律に基づく7つの自主規制団体の連携・協力のもとに運営されています。金融庁からは金融商品取引法第156条の39の規定に基づき、紛争解決業務を行う者として指定を受けており、法務省からはADR法第5条の規定に基づき、民間紛争解決手続の業務の認証を受けています。
2023年度のFINMACの相談件数は4,690件、苦情申出件数は1,155件、あっせん申立て件数は227件です。2023年度のあっせんは、仕組債の事案が大幅に増加し、前年度比49件増(27.5%増)となっています。
2017年にFINMACが相談員を公募していることを知り、「金融庁の金融サービス利用者相談室で相談員をしていた経験が役立つのでは」と思い、応募しました。
FINMAC相談員の業務について教えてください。
三原 相談員の業務は、金融商品取引業者の顧客からの金融商品取引業者との取引等に関しての相談への対応、苦情の取次、そして苦情からあっせんに移行すると、事務局として、弁護士である紛争解決委員の補佐も行います。
あっせんでの事務局としての業務は、申立人(金融商品取引業者の顧客)へのあっせん制度の事前説明、被申立人(金融商品取引業者)への答弁書や証拠書類の提出依頼に加え、東京以外の地方でのあっせん開催の場合は会場の予約をして出張し、あっせん終結後は、事案記録書の作成もします。
あっせんの期日前に、紛争解決委員から事案について質問等があった場合は、過去のあっせん事例や法令・自主規制規則等を調べて回答します。時には自分では調べきれない場合もあり、管理職や他の相談員にも相談し、部内で協力しながら紛争解決委員に回答します。
あっせん期日には、紛争解決委員の横に相談員も同席します。紛争解決委員が、申立人と被申立人のどちらの主張にも耳を傾けて、事案を整理しつつ話合いを進行されている様子を間近で見ることで、とても学ぶことが多いです。
ここ数年、仕組債のあっせんが非常に多くなっています。
退職金で購入した仕組債が大きな損失となり、老後の資金がかなり減少した申立人が、相談当初は、金融機関に対しての怒りをぶつけていましたが、あっせんで和解となった後に、「あっせんは不安だったが、FINMACに相談し、あっせんを申し立ててよかった。人生で貴重な経験となった」とおっしゃっていたことがあります。
あっせんで、申立人が紛争解決委員に気持ちを伝えることにより、金融機関への憤りの気持ちに少し区切りをつけることができたのでは、と思います。
FINMACのADRは、まだあまり知られていないのかもしれませんね。
三原 法務省の2023年度の調査によると、ADR(裁判外紛争解決手続)の認知度は20.9%、認証ADRの認知度はわずか2.7%です。消費生活アドバイザーでも「FINMACを知らない」とおっしゃることがあります。ADRのメリットである、手続の柔軟性、簡易・迅速性、非公開性、紛争内容に応じた専門家の活用等が一層認知されるように、FINMACとしても広報していく必要があると感じています。