信販会社を退職後、消費生活相談員に。生きがいがあります
幸山(こうやま)常男さん(消費生活アドバイザー16期)
三原市消費生活センター 消費生活相談員
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信販会社を退職後、消費生活相談員に。生きがいがあります
幸山(こうやま)常男さん(消費生活アドバイザー16期)
三原市消費生活センター 消費生活相談員
三原市消費生活センターでのお仕事について、簡単にご説明願います。
幸山 消費生活相談員として勤務しています。平日9〜17時、週4日勤務です。相談員は私を含め3名です。
相談件数は年間600件弱となっています。ちなみに、前職の尾道市消費生活センターが年間900件弱で、相談件数は、それぞれの人口数(三原市・9万人弱、尾道市・13万人弱)と、ほぼ正比例しています。
両センターとも月曜日は忙しいのですが、相談員として勤務したばかりのある日、私が「月曜日なのに電話が鳴らんねぇ…」と、覚えたての尾道弁でつぶやくと、同僚から「この間の雨の月曜日にも、同じことを言っていましたよ!」と指摘されました。「歳をとると物忘れがひどくなってヤダねぇ」と笑ってごまかしましたが、その時に「ひょっとしたら、天気が関係しているかも」と気が付きました。
尾道市で6年、三原市で7年、合計13年以上、消費生活相談員として働いていますが、共通して「雨が降ると消費生活の相談電話が激減する」と感じました。
雨が近づくと頭痛や関節痛がひどくなったり、気持ちが沈みがちで、だるい等の症状が出る「気象病」が知られていますが、「雨が降ると、人は苦情を言うのが面倒になってしまう」ことを生成AIを使って解明できないか。そんな野望を抱き、気象予報士の勉強を始めました。私は、企業を退職後に母校の大学院で脳科学を勉強しています。
信販会社で、お客様相談室長やCSR推進部長をされていました。
幸山 はい。2つの信販会社でお客様相談室長を経験しました。
信販会社のお客様相談室に入ってくる苦情で一番多いのは、「なぜ、私の審査が通らないのか?」というものでした。
この苦情に対する昭和の時代の答えは「当社の基準により、残念ながらご期待に沿えなくて申し訳ありません」でしたが、平成になると、「その基準とやらを教えろ! 基準の詳細を全部公開しろ!」ということになり、炎上してしまうことが増えました。さらに、「社長を出せ!」なんて苦情が入ると、お客様相談室長である私の出番となります。「総合的な判断です」とお答えし、型どおりに説得するよう心掛けました。
怒りがおさまらない方に、「念のため、個人信用情報機関にご自身の信用情報を確認されてはいかがでしょうか? 異動情報(いわゆるブラックリスト)等が何もなければ、弊社の総合的判断だとご理解いただきたいのですが」とお伝えしたこともあります。身に覚えのある人は声が小さくなりますし、他に関心を向けていただくことができます。怒りの鎮静化に努力していましたね。
どこのカード会社も20年以上前から、今でいう生成AIのような技術を使った「自動審査システム」を導入しています。そこで、「コンピュータによる自動審査は、私たちも詳しくは知りませんが、たとえば仮に審査項目の総得点が1,000点満点で、920点以上が合格だとすると、今回は少し足りなかったとご理解してください」と、できるだけ数字等を入れて、分かりやすく答えるようにしていました。
退職後にACAPの個人会員になられ、大学院にも行かれているんですね。
幸山 2社目の信販会社も定年退職して、以前より加入していた(公社)消費者関連専門家会議(ACAP)の研究所に個人会員として奉職しました。
また母校の経済学大学院で、行動経済学と脳科学を一緒にしたような「神経経済学」という日本で初めての科目・講座を学んでいたところ、たまたま見た日本産業協会の相談員募集の欄に、「尾道市消費生活センター、有資格者1名」というのがあり、応募しました。尾道市には妻の実家があり、妻が一人で住んでいたので、そこに転居しようと思っていたからです。
当時、尾道市民では誰ももっていなかった(と思います…)消費生活アドバイザー資格をもっていたことで、すんなり採用されました。
2014(平成26)年度の消費者庁「ベスト消費者サポーター章」も受章されています。
幸山 消費生活相談員の仕事をしながらACAP研究所の研究員も兼ねていましたが、尾道から東京のACAP研究所に通うことが難しくなりました。それで「卒業論文」みたいな形で、「消費者の苦情行動や苦情対応を科学的に研究する」という小論文をまとめ、ACAP研究所レポートに掲載していただきました。
苦情行動研究会を主宰しており、「苦情を申し出る人の脳の反応はどうなっているか?」というテーマで、脳科学的な研究をしたかったのですが、英語の論文をろくに読めない私には、どうやら無理。そこで、大学院で学んだ脳科学を基に、たとえば多重債務に陥っている脳の動きや、「苦情や怒りを発信する脳の部位はどこか」といった内容をまとめて、「将来、AIを使って苦情の申し出に瞬時に対応できる日が来るのでは」とした卒業論文を何とか書き上げました。
その結果、2014年度にACAPから推薦を受け、消費者庁から「ベスト消費者サポーター章」をいただきました。確か広島県では第1号の受賞者だったと思います。
ACAP研究所では知識だけではなく、パソコンのエクセルやパワーポイントの使い方についても勉強できました。堪能な方に教えていただき、今では、出前講座の資料は、全部パワーポイントを使って作り、レーザーポインターで画面をサクサク動かしながら、しゃべりまくっています。