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資格活用への取組み

■問合せ件数は?


多田滋子主事

 「昨日の電話応対は約60件でした。月曜にしては電話が少なかったです。件数は日によって波がありますが、電話がつながらないときはめったにありません」
 こう話すのは、同相談室の多田滋子(ますこ)主事である。
 ただし、キャンペーンや新商品のCMを打ったりすると、大幅に増加する。最近で問合せが殺到したのは櫻井翔さんが出演するCMが流れた日。「いつ、放映されますか」「どこで買えますか」といった内容だった。
「電話によるお問合せが圧倒的なのですが、櫻井翔さんのCMについてはメールが多かったですね」(多田主事)
 若い人たちは、電話よりもメールのほうが聞きやすいのだろう。

 相談室には電話、手紙、メールを合わせて、年間で1万件くらいのお客様の声が寄せられる。件数は、ここ数年、大きな変化はないそうだ。

 時には、自社とはかかわりのない問題への対応に追われることもある。
 たとえば2008年に発覚した中国製ギョーザ中毒事件は、中国製食品に対する深刻な不信を招き、同社にも消費者の疑念の目が向けられることになった。
「当社とはまったく関係がないにもかかわらず、ひっきりなしに電話が入りました。みんなで、一所懸命説明しました」(多田主事)
 2013年にアクリフーズ群馬工場で製造された冷凍食品から農薬「マラチオン」が検出された事件では、番地が近い同社の工場との関連を疑う消費者からの問合せも入った。
 食品会社のお客様相談室は、風評対策の最前線である。

■お客様満足度がアップするサイクル

「ご提起およびお客様の声を日報にまとめ、毎日、関係部署のメンバーに届ける仕組みになっています。昼前頃には前日のお客様の声が全社に流れます。それを見て、気になることがあると、関係者がすぐに飛んできます。
 そして月に1回、当相談室主催の『声ナビ共有会』が開催されています。これには3カ月に1回、社長も出席するんですよ」(福田室長)

お客様満足度がアップするサイクル

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 図のように、この関係部署には家庭用・事業用商品開発グループ、生産本部の各工場・生産技術開発部・品質管理部などが含まれている。FFA-Iとは、冷凍食品原料開発輸入会社のFFAインターナショナル株式会社である。

 声ナビ共有会で、「こういう問題があります」と、社長に伝えると、「すぐに動くように」といった指示につながりやすい。件数が少ない問題の場合、他部署の担当者からは「もうちょっと様子をみよう」と言われがちであるが、社長の経営視点からの発言となれば、対応にスピード感が出てくるだろう。
「生産、研究などが入り、全部門が集まる会議を月に1回主催し、しかも経営サイドとの距離が近いというのは、この規模の会社としては、大きなメリットだと思います」(福田室長)

 同社のお客様相談室は、品質保証センターのなかに品質保証部と並んで入っており、品質を支えるセクションとして位置づけられている。ちなみに品質保証センター長は執行役員であり、その上司は社長しかいない。

 商品の改定時には、相談室メンバーが開発部門より説明を受ける勉強会(試食付きの場合もある)が実施され、商品知識がアップデートされている。
 また新商品の発売前には、最終段階のチェックを行う会議に相談室メンバーも参加し、パッケージの表示や使い勝手などについての意見を述べている。

 さらに、「ご提起」いただいたお客様へは調査報告書が送付され、その際には満足度調査(アンケート)も実施されている。
 これにより「お客様の声 → 関係部門が連携して改善 → お客様に回答/ 評価チェック」が行われ、お客様の満足度がアップするサイクルが回ることになる。

 ここ10年近く、味の素冷凍食品で大規模な商品回収が発生していないのには、こうした仕組みにより小さな問題にすぐに対応できていることが奏功しているのかもしれない。

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