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活躍する消費生活アドバイザー

伊東 美樹さん

想いをモノづくりにつなげるユニバーサルデザインを推進しています

伊東 美樹さん(消費生活アドバイザー40期)
花王株式会社 生活者コミュニケーションセンター 商品コミュニケーション部UD推進室長

1989年に花王(株)入社、香料科学研究所に配属され、ヘアケア製品の香りの開発を担当。1990年に文理科学研究所に異動し、シャンプーとリンスを識別するキザミの開発などに従事する。1992年に花王生活学研究所(消費者対応部門)に異動し、消費者相談業務のほか相談解析や消費者視点での製品開発、消費者調査、WebのFAQサイトや製品カタログサイトの立上げ・運営などに従事する。1993年、消費生活アドバイザー資格取得(13期)。2015〜17年、消費者庁消費者安全課に出向。2017年4月より現職。
趣味は散歩、ウォーキング。「今年は積丹半島に行き、カムイ岬の先まで歩きました。ふだんは家の近所を散歩したりしています」

UD推進室について簡単にご説明ください。

伊東 花王の消費者対応を担う生活者コミュニケーションセンターには、生活者と直接コミュニケーションし相談対応などを行う相談コミュニケーション部と、いただいた声を社内にフィードバックしモノづくりに活かす商品コミュニケーション部などがあります。
 UD推進室はこの商品コミュニケーション部に所属し、すべての事業部の製品を横断的に見て、お客様の声を活かしたユニバーサルデザイン(UD)を中心としたよきモノづくりを推進しています。
 たとえば、製品を見た時に、特別に意識しなくても製品がわかるように、すべての製品の表面にカテゴリー表記を入れるといったことや、「シャンプーで好評だった改善を洗剤にも活かせないか」といったように、改善を全カテゴリーでできないか情報共有をするようなプロジェクトの推進事務局もしています。

全商品を見ていらっしゃるのですか。

伊東 はい。商品コミュニケーション部全体で全製品を見ています。生活者コミュニケーションセンターでは、製品の勉強会もありますし、毎朝のミーティングで、新製品の相談状況やコマーシャルの反響反応など、いろいろな情報が共有されますので、メンバーは、商品知識や最近の状況について詳しくなります。製品の開発段階から入り込み、生活者の視点に立って「こういったことも注意しましょう」「最近はこういうことも考慮する必要があります」など関連部門に伝えています。

見慣れてしまう危惧はありませんか。

伊東 そこをカバーできるのが消費生活アドバイザー資格の非常によいところかと思います。「生活者の視点を忘れない」という取組みをしていますので、事業者サイドにならないよう常に生活者の立場を意識してチェックしています。

 そのほか、ユニバーサルデザインやDEI(Diversity 多様性、Equity 公平性、Inclusion 包括性)の意識を社員に醸成する活動も行っています。たとえば、疑似体験装具をつけて日常生活を体験してもらう高齢者体験ワークショップを開催したり、がん患者の暮らしに寄り添うイベントに製品開発のメンバーなどに呼びかけて参加したりしています。

 製品はみんなの力が集まって形になっていきますので、一人ひとりの想いが大切だと考えています。体験することで、「あの時、こうだったよね」といった想いをもってもらう。その想いが自分たちの仕事であるモノづくりにつながります。

UD推進で重視されていることは?

伊東 私は、「どういう想いをもって製品を使っていただいているか」「どういう想いから私たちに声を寄せてきていただいたか」と、ご相談の背景を知り、花王の製品をどのように生活に取り込んで使っていただいているかを考え、想いを汲み取り、社員が受け止めることが一番大切だと思っています。

 たとえば、製品のデザインを変えた時に「前のほうが良かった」という声をいただいたとします。デザインが嫌い、室内の色と合わないなど、嗜好性によるケースももちろんありますが、棚に入らなくなった、持ちにくくなった、キャップが開けにくくなった、というケースもあります。
 さらに、「開けにくくなった」という声には、高齢になり力が衰えてきていることが背景にあるかもしれません。どんな方がどういう状況で使っていたか、その人にとっての便利な開け方はどういうものか。一つひとつの相談の背景を考えていきます。

想いをキャッチするアンテナの感度が重要な気がします。

伊東 消費者対応部門の全員が感度を上げなければならないです。
 生活者コミュニケーションセンターでは、相談を「指摘」「問合せ」などに区分して対応するとともに、想いが強く伝わってきた相談に「UDフラグ」をつけています。これは、お客様の声を受け取った担当者が、UDフラグ区分にチェックをつけ、なぜそう思ったかなどのコメントを書くものです。直接相談で受け取った想いを、相談者の言葉と共に共有することにより、社内への伝わり方がより深くなると思っています。

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