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活躍する消費生活アドバイザー

大学院の非常勤講師として「紛争ケース分析」「消費者法」を教えられたことも?

宮園 はい。「紛争ケース分析」は、紛争解決・紛争変容学で使われる分析ツールを活用して、消費者紛争の事例を学生たちと分析しました。国民生活センターADR報告書などを参考に事例を作成しました。社会人大学院だったので教師や医療従事者、士業の方など専門性のある受講生が集まり、私が話題を提供して一緒に学ぶといった、話題提供と進行役をする感じでした。今でも大学院で出会った方と交流があります。

 「消費者法」は、特定商取引法や消費者契約法、景品表示法などの消費者法の解釈について教え、判例や東京都被害救済委員会の報告書などを教材として使いました。

「発達障害がある人の消費者紛争」という論文(『NACS消費生活研究』2019年)を発表されています。

宮園 発達障害がある方は、能力が劣っているというわけではなく、すごく優れているところがあるにもかかわらず、整理が苦手だったり、コミュニケーションが苦手だったりする面があります。ですから、コミュニケーションのチャンネルや方法を変えると、よく考えたり、解決ができたりするんですね。環境を変えたり、ちょっと工夫をするだけで。
 そのあたりについて、知識を得たうえで相談者の話を聴きたかったので認定心理士の資格も取得しました。

現在は九州財務局の専門調査員をされています。どのような仕事ですか。

宮園 借金問題を抱える方の話を聴いて、解決への見通しを立て、弁護士と連携し、前に進む行動につながるようにコーチングも取り入れた支援を行っています。
 コーチングは、プロも参加しているコーチング塾のようなクラスなどに参加して、学んでいます。
 「こうだよ」と道を示されても、自分で気づき自分の頭で考えて行動しないと、なかなか人は方向を変えられません。同じ人が何回も、多重債務やトラブルに遭うことがよくあります。そういう方には、カウンセリングに加えてコーチング的なかかわりもしたほうがよいと考えています。
 弁護士に希望することを十分伝えられるように、また弁護士の助言を受け入れられるように、対話ができるように間に立ち、熊本大学で学んだメディエーション(裁判によらない、中立の第三者を入れた話し合いによるトラブル解決手法)も使っていきたいと思っています。

NPO法人熊本消費者協会の副会長もされています。

宮園 はい。現在の私の中心的な活動の一つです。消費者協会は、市町村の相談業務や出前講座の委託事業に携わるほか、消費者団体として時事的な消費者問題を捉えたセミナー開催や消費者への情報提供、消費生活相談員の交流とエンパワーメントなどを行っています。
 消費者協会の先輩に、日本全体やグローバルな視野に立つ消費者団体としての視点や問題意識、社会変容へつながる活動などを教えていただきました。先輩方の想いを新しい方々につないで、自分から湧き出る何かをプラスして活動を担っていくことが私の役割と思っています。また、弁護士や司法書士、教師など、多様な専門家と建設的な関係を築き、維持する一助となることも副会長の役割だと考えています。

エンパワーメントの手ごたえはいかがですか。

宮園 熊本県には、1人で消費者相談にあたっている一人窓口もたくさんあります。1人だと同僚の相談員と検討することが難しく、精神的につらいことがあり、大変です。消費者協会には県の消費生活センターに勤務する人もいますから、県と市町村が連携することにもつながります。お互いに顔を合わせて話ができ、大きな役割を果たしていると思います。

 今後は、相談員のエンパワーメントとともに消費者のエンパワーメントにも取り組みたいですね。ゆうちょ財団の助成金をもらって、いくつか事業を実施しています。
 たとえば、熊本地震の直後に被災者支援として「お金にまつわる問題解決について考えてみませんか?〜効果的な被災者支援を考える対話カフェ〜」を県内5か所で実施しました。
 子どものオンライン課金についての勉強会「小中高生の高額なオンラインゲーム課金の予防や解決について多角的に考える」も行いました。子どもの支援は消費生活センターだけでは無理で、教師、自治体、保健センターなどと保護者が連携しないと解決が難しいです。そこで、大学院で出会った方々に声をかけて現場の先生や福祉の方と一緒に、コロナ禍中にオンラインセミナーを3回実施しました。

 もっと、消費者と事業者の協働関係の構築による公正な市場形成にも取り組んでいきたいですね。
 現在は委託事業の相談業務が大半になってしまいましたが、地元企業と消費者団体で環境問題についてシンポジウムを開催するなど、以前はよく実施していました。事業者と協働して何かやれたら、との思いはずっともちつづけています。

NACS熊本分科会代表としても活動されています。

宮園 (公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)熊本分科会では、昨年と一昨年は、製品安全について、県消費生活センター商品テスト担当者や自動車整備振興協会の方を講師に招いて、熊本消費者協会と共催で研修会を行いました。

最後に、消費生活アドバイザー資格が役立ったことがありましたら。

宮園 仕事を得ることができました。また、消費生活アドバイザーの有資格者と出会え、視野が広がり、専門的知見を得ることもできました。
 さらに、消費者として行政の委員となり意見を述べる機会に恵まれ、多くの知見に触れることもできました。消費生活アドバイザーとして地元新聞に記事を書いたり、テレビに出演したことも。熊本県消費生活センターの相談員をしていた頃は、消費生活センターの広報番組でくまモンと共演することもできました。1年間だけですが、その動画を出前講座に使うこともできたんですよ。

 熊本消費者協会で出会った消費生活アドバイザーの先輩方が私をエンパワーしてくださっています。消費者相談についての違う視点に気づかせていただいたり、NACSの活動でも、様々な地域の方とお会いでき、お話をうかがい意見を交わすことができます。そういう方々と出会えたことは財産ですね。

(取材:2023年12月8日)
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