TOP > 消費生活アドバイザー > 資格活用事例 > 活躍する消費生活アドバイザー > 宮園さん インタビュー記事1

活躍する消費生活アドバイザー

宮園 由紀代さん

コーチングを取り入れた問題解決に取り組んでいます

宮園 由紀代さん(消費生活アドバイザー14期)
九州財務局 専門調査員 / NPO法人熊本消費者協会 副会長

化粧品会社勤務後、熊本大学助手などを経て、1995年に熊本消費者協会に参加し、1996年より熊本市消費者センターの消費生活相談員となる。業務と併行して熊本大学大学院にて修士課程(民法)、博士後期課程(交渉紛争解決学領域)を修了。2012〜2018年に熊本大学法科大学院法曹養成研究科 非常勤講師(消費者法)、2013〜2019年に同大学院社会文化科学研究科 非常勤講師(紛争ケース分析)。2013〜2023年3月、熊本県消費生活センター 消費生活相談員、2023年4月より九州財務局 専門調査員。NACS熊本分科会代表。博士(法学)。認定心理士。熊本市環境審議会委員などの複数の委員に従事。
コーチングクラスを楽しんでいる。「毎回新たな発見があり、わくわくする場になっています」

まず、消費生活アドバイザー資格を取得されたきっかけを教えてください。

宮園 化粧品メーカーに勤務していた時に、この資格を知りました。そこは消費者にどのようにアプローチしていくか戦略を考え販売店を教育する部署で、新人研修時に上司から「こういう資格がありますよ」と勧められました。でも、当時は受験資格が実務経験2年以上 / 28歳以上だったため、取得したのは、結婚後に熊本に転居し、熊本大学の助手をしていた時期になりました。

 消費生活アドバイザーの先輩が熊本消費者協会に参加されていまして、「面白そう」と入会したところ、たまたま、熊本市消費者センターの相談員募集のお話が出ました。それまで、消費生活相談員という仕事があることも知らなかったです。

印象に残っている相談対応はありますか。

宮園 熊本地震(2016年)の後、住宅の屋根工事のトラブルを抱えた相談者を熊本県弁護士会の震災ADR(裁判外紛争解決手続)につないだ件です。

 ADR手続きが始まってからも、調停手続の「期日」までの間、相談者の不安な気持ちに寄り添い、話を聴きました。なかなか合意が成立せず、相談者が手続きを続けるかどうか迷い、弁護士を代理人にして事業者と交渉しようかと考えはじめた時には、弁護士相談にも同席しました。
 ところが、ADR手続きでの和解が成立して再工事が行われたにもかかわらず、不具合があったんです。相談者が弁護士に直接言いづらいと感じたので、私のほうから担当弁護士に伝え、再度の合意につながりました。相談者が前向きになり、どんどん明るくなっていくのが実感でき、うれしかったです。
 熊本県弁護士会が開催した「2018熊本震災ADRシンポ〜2年の活動報告〜」にも、パネラーとして参加し報告しました。その懇親会では弁護士や建築士と交流し、それぞれの専門家がチームで行った問題解決についても知ることができました。

 熊本地震後はたくさん相談が寄せられました。書面不備によるクーリングオフなどは消費生活センターのあっせんで解決できるケースも多くありました。地震発生時は、熊本県消費生活センターに相談員として勤務しており、また土日夜間は熊本消費者協会に委託された相談対応をしていたため、しばらくは相談現場を離れられませんでした。
 地震直後の怒涛の時期が過ぎ、ADRについて研究されている九州大学の入江秀晃先生がボランティアで開催されている勉強会に参加することができました。博多駅に着き、普通の日常があるのを見て涙が出たのを覚えています。
 その勉強会に熊本県弁護士会のADR担当の弁護士も来ておられて、入江先生のご尽力もあり、「行政とも連携し、熊本で災害ADRに取り組もう」と、動きはじめました。

熊本地震の際は、どのように消費者相談が行われたのでしょうか。

宮園 阪神・淡路大震災や東日本大震災を経験した行政の方々、大学の先生、いろいろな方が熊本を支援し情報をくださいました。東日本大震災後に司法書士会や弁護士会が実践的なマニュアルを作っています。限られた人数での相談対応は大変でしたけれど、そうした積み上げられてきたものによって、「こういう対応をするとよい」という道案内はありました。

 ただ、マスコミにも消費生活センターの電話番号を案内していましたので、消費生活相談以外にも対応しなくてはなりませんでした。おそらく被害に遭われた方は、消費生活相談かどうかの線引きができなかったと思います。「罹災証明書の発行が遅い」「隣の屋根瓦が落ちてきて車が壊れた」など、とりあえず消費生活センターに聞くという感じでした。

熊本市消費者センターの相談員に従事されながら、修士・博士課程を修了されています。

宮園 熊本市のセンターはフルタイム勤務ではなかったので、大学院との両立もそれほど大変ではなかったです。(公社)消費者関連専門家会議の「私の提言」に応募し2年続けて賞をいただいたことで、論文をまとめてみたいと思って進みました。
 修士課程は一般の大学院コースで、昼間の授業でした。消費者契約法が制定され、今後はあっせんに法律知識が必要だと思ったので、民法を専攻し法社会学も学びました。

 博士後期課程に進んだきっかけとなったのは、夫に同行した1年間のイギリス滞在です。研究者と話をすることが多かったのですが、皆さん、楽しそうに生き生きと、自分の研究について話をされていました。私も、そういうものをもちたいと思ったんですね。
 それから、きっかけとなったことがもう一つ。ある朝、テレビをつけたら、BBCに'Which?'(イギリス消費者協会)が損害賠償請求の団体訴訟をしたというニュースが出て、びっくりしました。私はこの団体が発行している雑誌の購読会員でした。消費者団体の力で問題を解決する方法もあるんだな、と。また、イギリスでの出会いによって対話による和解の方法を見つけることも必要なんだろうと感じ、法社会学をベースに消費者紛争の解決についても研究したいと思いました。
 このwhich? の訴訟は解決までに時間がかかったので、帰国してからもニュースを追っていました。当時、日本には適格消費者団体の仕組みはまだありませんでした。

 博士論文のテーマは「消費者相談の複合的な役割 -消費者紛争の多様性と相談員の役割モデル-」です。消費生活相談員は、弁護士や司法書士の下に位置するものではなく、相談員の専門性もとても大事であり、「消費生活相談員の役割とは何であろう」と、法社会学の視点で相談員について分析しました。イギリスの消費生活相談員についても調べました。

▲TOP