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活躍する消費生活アドバイザー

藤井 慶文さん

パラレルキャリアで、QOLを推進する社団法人を設立しました

藤井 慶文さん(消費生活アドバイザー38期)
一般社団法人クオリティ・オブ・ライフ推進機構 代表理事

学校法人職員からスタートし、大和団地(株)などをへて、大和ハウスグループであった大和リゾート(株)に入社。これまで全国各地を北から南まで13回転勤し、4か所のホテルで総支配人を務める。2012年本社勤務となり、その後お客様相談室長に就任。2019年、(一社)クオリティ・オブ・ライフ推進機構を設立、理事に就任しパラレルキャリアをスタート。2023年、大和リゾートを定年退職。消費生活アドバイザーをはじめ、サービス介助士、日本FP協会(AFP)、健康・普及認定講師など、資格を多数取得。
「今日は、どんな人に出会えるかな」と、イベントやセミナーによく参加している。年金生活で始めた投資の判断基準は「身近なもので、自分がよくわかっているもの」とのこと。

クオリティ・オブ・ライフ推進機構」について簡単にご説明ください。

藤井 設立は2019年4月で、ちょうど平成いちばん最後の月になります。
 私はじつは、今年の3月末まで、リゾートホテルを展開している大和リゾート株式会社で、お客様相談室長 / CS部長として顧客満足の向上や人材育成などにあたっていました。ですから、4年間パラレルキャリアで仕事をしていたことになります。
 就業規則に「副業はしてはいけない」と明確に書かれていましたので、担当部署にかけあい、「給与なしで運営する」ということで会社に許しをいただき、社団法人理事との兼任を認めてもらいました。約款にも「理事はお金を受け取らない」といった条項を入れました。

 一般社団法人にしたのは、NPOより自由度が高いと考えたからです。NPOのほうが行政などの信用度がありますが、会社員をしながら行うので動きやすさを優先しました。
 非営利の一般社団法人の設立には、理事が少なくとも3人必要でしたので、大学時代いっしょにボランティア活動を行っていた仲間に声をかけました。

大学時代といいますと、40年以上前のお仲間ですね。

藤井 そうですね。社会人になる時に「またいつか、時間ができたら、何か社会に役立つような活動をしよう」という話をしていました。YMCAで野外活動のリーダーをしていた時の仲間、松田秀美さんです。地方公務員だったのですが、同年齢ですから定年も同時期なわけです。
 それから多様性、ダイバーシティを重視しようと、奈良県自治連合会会長をされていた藤堂宏子さんにも声をかけ、入ってもらいました。奈良県は私の出身地なんです。
 中心となっているメンバーは、この3名です。会員は首都圏、大阪が中心ですね。

どのような活動を?

藤井 私たちは、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:Quality of Life)を「一人ひとりが健康で、自分らしくより豊かな生活を送り、幸せな人生をかなえようとする概念」ととらえています。「QOLを高めてウェルビーイング(well-being)につなげていこう」というのが、この法人の目的です。

 活動の柱として、3つの社会課題の解決を掲げました。

  • ① 健康寿命の延伸
  • ② 資産や環境などの持続可能な生活基盤づくり
  • ③ 生きがいづくり

QOLの樹と呼んでいます。

 当法人の略称「QOLジャパン」は商標登録しています。
 QOLというと、まず医療・福祉に関係した話が出てくるのですが、私たちが考えているのは住環境や家計を含む、消費生活そのもののQOLです。
 ライフスタイルは一人ひとり異なり多様性そのもの、その時々によって生活状況や環境が異なります。親御さんを介護されている方やご自身が病気になっている方もいらっしゃいますし、会社員人生も皆さん異なります。
 どういった状態にいるかによって、求めるQOLも違ってきます。その時々に、「何を得れば、QOLが上がるだろうか」を考え、道筋を取捨選択していくのだと思います。

 取捨選択するには、変化に対応していくためにも、そのつど、正しい知識を学び情報を収集しなければなりません。現在はインターネットで多くの情報が得られますが、それらが正しいかを適切に判断して活用する能力、すなわちリテラシー(正しい情報の見極め)が必要です。リテラシーは私たちが大事にしているキーワードです。

QOLとは、どのように出会ったのですか。

藤井 2012年に本社勤務となり、朝に勤務が始まり夕方に終わるという就業形態になりました。それまではホテルの現場責任者でしたから、夜中でも電話が1本入ったら出勤しますし、お客様が多い週末・祝日ほど多忙で、不規則でした。休みが規則正しくとれる状態になり、いろいろなことを学び直ししようと思いました。

 QOLとの出会いは、そうした学びをしていた時です。
 (公財)日本ケアフィット共育機構が認定を行っている「サービス介助士」という資格があります。ホテルのようなサービス業や鉄道会社・航空会社、百貨店などの小売店、金融機関などで接客に携わっている人が、障がい者や高齢者の方に適切で役立つ介助技術を身につけられる資格です。2016年に障害者差別解消法が施行されたこともあり、私は全国のスタッフにこの資格の取得推進をする旗振り役も務めました。
 このサービス介助士資格のテキストに、QOL(生活の質、生命の質、生き方の質)の記述があったんです。そこには、「超高齢社会の中では、加齢による病気や障害があることで生きる勇気を失ったり、社会参加を求めなくなったりして生活の質を低下させたり、生き方の質を低下させたりする場合」が見られるとして、「QOLは人間としての生き方や目標を示す言葉としても用いられています」と書かれていました。
 自分自身も50歳代に入り、親の介護なども身近なテーマです。「QOLを私のライフワークにしよう!」と思いました。

とはいえ、QOLの受け止め方は一人ひとり違うかと。

藤井 そうですね。これから実践していくなかで、それぞれの人が自分なりのQOLを確立していけばいいと思っています。
 QOLについての論文を発表するわけでもありませんから、ゆるいつながりで、これからも活動していきます。みんながウェルビーイングで、「幸せだな」「病気はもっているけれども健康寿命を保っているな」「QOLを意識して100年時代をよりよく生きることにつながったな」と、感じられるようなつながりです。
 ウェルビーイングは、人間の豊かな生活を表す概念です。「病気ではない」「弱っていない」ということではなく、身体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。よりよく生きること、健康・幸せを意味しています。
 活動が広がっていったら勉強グループを各地でつくり、交流しながら、互いに学べるような場所づくりを進めていきたいです。個人個人、一人ひとりの「第3の居場所」として「学びとつながりの場」になるような活動をしていきたいです。

 しかしながら、社団法人を立ち上げてすぐにコロナ禍が襲来、流行の真っただ中での活動となり、オンラインのみのセミナー開催が続きました。今年に入ってからは会場に集まっていただくセミナーや講演会も開催しています。

セミナーなどの手ごたえはいかがでしょう?

藤井 手ごたえがありますね。皆さん、主体的に考えるきっかけになるようです。
 参加される年齢層は圧倒的にシニアです。50〜70歳の女性の方が多いですが、少しずつ男性も増えてきています。
 今年は、市町村の教育委員会や市の後援をいただくなど、年に4〜5回セミナーや講演会を行っています。

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