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活躍する消費生活アドバイザー

逆に、当時と近年で大きく変わったところは?

中村 女性が家の外で働くようになったことですね。
 現在、女性の就業率は7割くらいだと思います。共働き世帯が専業主婦世帯を超えたのが1992年です。その頃は両者の世帯数が拮抗していましたが、1997年頃からどんどん差が開き、現在は共働き世帯が倍以上になっています。
 家族の形はすごく変わったと思います。核家族・郊外1戸建て・専業主婦・子ども2人といった家族は、いまや少数派です。圧倒的に1人世帯が多い。
 1人世帯には、ご高齢での1人もいれば、結婚しない、もしくは離婚して1人という人もいますけれど、お一人様が増えた。これからもお一人様の市場は増えていくと感じます。

 家族の形はあきらかに変わり世帯の捉え方も変わったので、本来は社会のシステムも変えていかなければいけないのですが。

女性が活躍の場を広げるために、どんな行動が有効と思われますか。

中村 男性は、父親や世の中の働く男の人を見て、なんとなく自分はこうなるだろうと、将来をイメージしやすいと思います。女性は生き方が多様で、キャリアを積まれる方もいれば、パートで働く方もいる。専業主婦の方もいれば、結婚しない選択肢をとる方もいる。そのため自分の将来をイメージしにくいのですけれども、逆に見ると、多様な選択肢があるということです。

 小学生くらいの早い時期から、自分にとっての幸せがどういうものか、何であれば自分が頑張れるのかを漠然とでも考えられるとよいのではないでしょうか。
 また、成長の段階ごとに伝えたり、見せていくことが大人の役割かと思っています。

 子どもたちが将来を描く時には、漫画や物語や童話に埋め込まれているイメージにも影響されます。また、外からのバイアスによって人生の道が狭められていくことも多いです。「お姫様になりたい」「専業主婦になりたい」もよいのですが、仕事は思っているよりも多く、無限にあると伝えたいです。働き方も広がってきていますし、なりたいものが何度も変わってもよいでしょう。
 いろいろな人に出会い、自分で経験しながら、やりたいことを決めていってほしいです。それを大人がサポートしていければ、と思います。

それでは、消費生活アドバイザーについて。取得されたきっかけは?

中村 私が資格取得したのは、育児休業明けで、仕事をセーブしながら「これからどうするか。このままでキャリアが築けるだろうか」と考えていた時でした。

 当時は、日経MJで「商品オーディション」という企画を担当していました。新商品について、学識経験者や広告プランナー、メーカーの方など4〜5人の専門家から、マーケティングのヒントや商品の評価をいただくのですが、そこに消費生活アドバイザーの方が何人かいらっしゃいました。
 的確なアドバイスをされ、企業のマーケッターの視点でもなく一般的な消費者の立場でもなく、両者の視点をあわせもった消費生活アドバイザーという立場で発言されていました。それで、「この資格をもつと、こういう視点がもてるのかな」と。
 その方々は、当時の私より年上でしたので、「こういうふうに仕事を続けられるんだ」と漠然と思った記憶があります。

 法律などは、初めて知ることが多かったですし、一からの勉強だった気がします。マーケット面から消費を見ていましたが、消費者と企業がどう向き合っているかを学ぶことで、違う視点がもてました。
 企業も、マーケッターの目線だけではなく、消費者の目線も必要でしょう。たとえばCMでどう訴えるか、SNSでどういう言葉を使うかといったところに、消費生活アドバイザー的な視点をもっていくと、炎上問題も避けられるのではないかと思います。

消費生活アドバイザー資格が役に立っていることは?

中村 どんな仕事でも消費生活アドバイザー的な視点は役に立つと思います。製造現場であれ研究開発であれ、顧客と無関係な仕事はないですし、生活者と無関係な物づくりもないでしょうから。
 また仕事に関係はなくても、資格取得後に行われている更新研修には、情報通信に関するトラブルやセカンドライフなど、時代に合わせた講義も増えています。暮らしや生き方の学びがあり、視野が広がるきっかけにもなっています。

最後に、今後取り組みたい企画は?

中村 今興味があるのは、地域活性化、地域づくりです。
 日本はどの地域も食べ物や自然が豊かで、歴史に根ざした風土があり、魅力的だと思います。訪日客が増えているのも納得です。しかし一方で、東京以外は基本的に人口が減少しています。魅力的と思う地域ほど、高齢化・少子化・人口減少に悩んでいます。

 日本全体の人口が減っているので、ある程度仕方ないのですが、必ずしも東京に集中する必要もないでしょう。
 週の半分を過ごしたり、月に何回か行く場所をもつ。あるいは年代やライフステージで住まいをシフトしていく。関係人口のような形で地域に関わる人を広げ、地域の魅力を伝える観光や空き家再生で活性化し、祭りや伝統行事などが継続できないかと強く思っています。

 東京は特に若い女性が多いのですが、逆に「どうして若い女性が地元を出ていくのか」を真剣に考えなければなりません。地方のほうが性別の役割分業意識が根強かったりしますが、一方でテレワークは一般的になってきています。地域課題を解決できるようなビジネスを立ち上げ、若い人たちのデジタルスキルが活かせるようになれば戻ってくるかもしれません。

 地方で暮らしにくさや働きにくさ、生きづらさがあるのだとするならば、それを一つひとつ解決していくのに、消費生活アドバイザー的な視点が役に立つように思います。

(取材:2023年6月15日)
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