■苦情処理のプロセス
JAROの広告・表示の苦情処理は、どのように行われているのだろうか。
そのプロセスには三つのステップがある(資料1参照)。
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(資料1)JAROホームページより
●第1ステップ
電話やFAXなどにより消費者や事業者から寄せられた相談にJAROの相談員が対応する。
相談は内容により、「苦情」と「問い合わせ」に分けられる。
「苦情」は、JAROでは次の3つの要件を満たすものとしている。
- 1.相談者の氏名、連絡方法が明らかである。
- 2.事務局で広告の確認ができる。
- 3.相談者が広告に不都合ありと主張している。
「問い合わせ」の内訳は、「意見」「照会」「広告以外」に分けている。
「意見」は「苦情」の3要件を満たさないが、内容は「苦情」と同等のもの、とされている。たとえば、「このテレビCMは子どもに見せたくない」「拝金主義的だ」といったものが入る。
「照会」は、事業者等からの広告制作時の事前相談であり、特に近年、会員社からのニーズが高い。
2013年度は相談受付総数が5,640件、うち「苦情」273件、「意見」2,698件、「照会」2,227件、「広告以外」442件だった。
相談員は、表現に関するものなど問題の程度が比較的小さいものであれば、内容を広告主に情報提供するとともに、問題があるものについては、広告主に電話や書面で照会し、その回答を相談者にフィードバックすることもある。
広告に問題があるおそれがあれば、第2ステップに入る。
また、相談者が納得しない場合は不服申立てを行うことができ、次のステップで対応する。
●第2ステップ
上記のような「苦情」は、JARO業務委員会で審議される。この委員会は、会員社のなかから委嘱された委員で構成され、毎月開催されている。
業務委員会は、相談者の苦情内容、広告物および広告主から出された回答を審議し、その結論は「見解」として申立者(相談者)・被申立者に伝えられる。
2013年度の見解件数は、36件であった。
「見解」は、次の3つに分けられている。
「警告」…広告および表示事項が、公正さを欠き、消費者の判断を著しく妨げることにより不利益を与え、または、関係法令に抵触することから撤回等が必要と認められるもの
「要望」…広告及び表示事項が、実際のものより優良・有利に表現され、消費者に誤認を与えるおそれのあるもの。または、関係法令に抵触するおそれがあり、当該表示の修正を求めることが必要と認められるもの
「提言」…広告及び表示事項の一部が、消費者に誤認を与えるおそれがあるため、検討を求めることが必要と認められるもの
2013年度は、「警告」19件、「要望」9件、「提言」8件であった。
審査部の野崎佳奈子さんは
「ただちに法に抵触するものではないケースでも、消費者が誤認をするおそれがあるものについては、『表現をご検討いただいたほうがよろしいのではないでしょうか』と提言をさせていただいています」と話す。
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野崎佳奈子さん
(消費生活アドバイザー33期)
消費生活コンサルタント。2005年9月からJARO事務局審査部に勤務。「小学生の頃に見たJAROのCMをよく覚えています」。
「見解」には行政のような表示を改善させる強制力はないが、広告主の8割程度からは、「表示を見直す」といった回答が戻ってくるとのことである。
この「見解」によってはじめて問題を認識し、「広告・表示の勉強をしたい」と、JAROに入会する企業もあるという。
この段階で、相談者あるいは広告主が納得せず、不服申立てがあれば、次のステップでの審議となる。
●第3ステップ
学識経験者7名で構成されている審査委員会に諮られ、最終判断となる「裁定」が示される。ここは裁判制度でいえば、最高裁判所にあたる。
「裁定」に至る苦情はほとんどなく、JARO設立以来19件のみであり、ここ数年は出されていない。