会として、一番印象に残っている調査研究は?
長谷川 こうして思い返すと、食洗機のパネルディスカッションやコンロ、おにぎり、卵…、どれもこれも印象に残っています。
「白醤油 & 白たまり」は、ちょうど研究成果がまとまった2016年に碧南(へきなん)市で全国醤油サミットが開催され、会場でパンフレット『読めば使いたくなる 白しょうゆと白だしのお話』を配布しました。大好評で、サミット終了後、碧南市役所の依頼により2,000部増刷してお送りしました。
最新のみりんパンフレットは今までの経験も活かされて、一番読みやすくきれいに仕上がったのではないかと思っています。中部地方出身ではないメンバーからは、「この地の発酵・醸造の食文化など、初めて知ることばかりで、白しょうゆ・白だしも、みりんも印象に残っている」という声がありました。
直近の「みりんのお話」について、詳しくご紹介ください。
河合 きっかけは、定例会で「スーパーでは、価格、名称など、いろいろな種類のみりんを目にしますが、その違いは?」「愛知県には三河地方(おもに碧南市)に歴史のあるみりん屋さんが数社あるけれど、地元のみりんの特長は?」などの意見が出たことでした。
「まずは、みりんの作り方について学んでみよう!」ということで、製造工場を訪ねることにしました。
●みりん蔵見学
碧南市のみりんメーカー・杉浦味淋さんは、昔ながらの製法を復活させ、新しい時代の用途として洋菓子への利用も展開。
九重味淋さんでは、廻船問屋時代の面影の残る社屋と「九重みりん時代館」を見学。
角谷文治郎商店さんでは、主原料のもち米の迫力ある蒸し工程を見学し、みりんの変遷、表示についても学びました。
小笠原味淋さんでは、伝統のみりんが手作業で丁寧に製造され、受け継がれていることをしっかりと感じました。
岐阜県川辺町の白扇酒造さんにもうかがい、昔ながらの酒蔵で、みりんにまつわる文化・歴史をお聞きしました。
●みりんの色比べ、味比べ
伝統的な本みりんと一般的な本みりん、みりん風調味料を購入し、色、味について比較してみました。
色を比べると、本みりんは琥珀色のイメージ。熟成期間が長いと色が濃くなるようですが、メーカーにより差があることがわかりました。
味についても、甘くとろりとした味が多いなか、比較的さらっとした味もありました。
思った以上に商品ごとの個性が感じられ、お酒として楽しめる品も多く、リキュールのような使い方もできます。熟成期間が長いとコクが強く感じられました。
●パンフレットの作成
これらの活動を通した研究成果として、2016年発行の「白しょうゆ・白だしのお話」に続き、「みりんのお話」のパンフレットを作成しました。
みりんは歴史が長いだけに、その時代の社会情勢に大きく影響を受け、原材料、製造法などで分類するのは難しい、かなり複雑な調味料であるということがわかりました。現在の食品表示だけでは読み取れない背景も知ることができました。
研究会の活動が、長く継続されている秘訣は?
河合 なんといっても、メンバーの熱意です。
それから、さまざまな職種のメンバーが集まることで、お互いに学び合える会であること。
調査研究に没頭するだけでなく、生活者としての雑談(情報交換、意見交換?)が多いこともあるでしょう。食にまつわる楽しい話、おいしい話などの情報交換もしています。
メンバーそれぞれの興味に刺激を受けることも多いです。