消費者目線の電力自由化についての考えをお聞かせください。
巻口 心配していることがあります。
一つは情報格差。情報格差と世代格差はほぼイコールです。お一人で暮らしていらっしゃるような、Webにまったくアクセスできないお年寄りにどうやって比較サイトが行っている情報を伝えるか。ものすごく課題意識があるんですけれども、答えが見つかりません。
誰でも見られるテレビや新聞などで、いろいろ情報を流していただきたいと思っています。
それから地域格差。いま電気事業者34社230プラン(2016年4月12日現在)から選べるといっても、地域によっては、新規参入がまったくないところもあります。同じ日本でありながら、自由化のメリットを享受できない。既存の電気事業者が新メニューをスタートするにしても、選択肢が非常に限定的になってしまう。
電力自由化のメリットを広く国民全員が享受できるような環境をつくっていく必要があると思っています。
今後の抱負などを。
巻口 電力自由化が入り口で、来年のガス自由化が出口。ガスの方向が定まるまでは、死ねないなあ。
もちろん、エネチェンジは「エネルギーのチェンジ」ですから、ガスの比較サイトも運営します。
ただし、比較するのはあくまでもエネルギーですね。クレジットカードや保険分野などへの横展開は考えていません。エネルギーは暮らしに欠かせないものです。そこで存在価値があると評価されることが重要です。
エネルギーというものをもっと深掘りしたい。縦のほうにもっていき、エネルギーをいかに効率よく使い、節約ということを忘れずに、いかに自由化のメリットを享受できるかを深く追究していく。そういう仕事をしたいと思っています。
たとえばプロパンガスは、実質的な地域独占が進んでいる分野で、価格設定の仕組みが不透明です。そこをユーザーが比較サイトで情報を得て、自由に選べるようにしたいですね。「そんなことできるわけない」とよく言われますが、会社としても、消費生活アドバイザーとしても、一消費者としても、なんとか実現したいと思っています。
もう一つ、「エネルギーの使い方を間違えないように」と言いたいです。
今回の自由化で、ある意味、電気は使えば使うほど安くなることが許されるようになりました。こうした使い放題のメニューは許せないんですね。
「携帯電話には使い放題があります」と、言われるかもしれません。でも携帯電話の場合は、一度設備をつくってしまえば、エネルギーは使う量によって大きく変わらないと思います。電気の場合は1kW多く使えば、その分石油を燃やしたりすることになるわけです。
電力自由化と、節電・節エネは、両方をセットにして進めるべきだと思っています。
電気を選ぶ人が、自分のライフスタイルに合ったメニューを選ぶ。ライフスタイルは多様化していますから、それぞれの人が自分に合ったものを選べば、全体としては非常に合理的な選択となってくるはずなんです。そうすると、全体が最適化されているから、よけいな設備も造らなくてよくなり、大きくいえば地球温暖化にも貢献します。

(取材:2016年3月16日)
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