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活躍する消費生活アドバイザー

高松 幸一さん

重度障がい者多数雇用事業所の経営に携わった経験から、「社会に貢献できる仕事に就ければ」と相談員になりました

高松 幸一さん(消費生活アドバイザー29期)
九州経済産業局消費経済課 消費者相談室 相談員

1982年に九州松下電器株式会社(現パナソニック株式会社)に入社、全社品質統括部門で品質ガバナンスを担当。その後、BtoCやBtoB事業部門で品質保証を担当し、グローバルにエンジニアリングチェーン軸、サプライチェーン軸における品質向上に取り組む。
2018年に重度障がい者多数雇用事業所であるパナソニックの特例子会社の一つであるパナソニック交野株式会社に出向。2021年7月より現職。
モットーは、「明るく楽しく元気よく、自分らしく」。嫌いな言葉は、「聖域、前例、様子見、故障中など。思考を止めるような言葉はいやですね」

現在のお仕事について、簡単にご説明願います。

高松 九州経済産業局消費経済課の消費者相談室に勤務しています。
 当相談室は、経済産業省所管の法令・物資・役務に関する消費者および消費生活センターからの相談を受け、助言を行ったり情報提供を承ったりしています。
 相談では法令の考え方についてご案内していますが、個別事例の断定的判断は行っていません。ときには消費者の方から、クリアな回答を求められる場合がありますが、明確にお答えできない場合も多々あります。このため、「満足いただけてないかな」と感じることもありますが、わかりやすく丁寧な回答を心掛けています。また日頃から情報収集を行い、最新知識の習得やトレンドを知って、感度を高めるよう努めています。その一環として広告媒体(チラシやフリーペーパーの収集、TVショッピングの内容等)の収集・分析を日課としています。

民間企業を退職後に九州経済産業局で勤務されているのですね。

高松 はい。パナソニックでは、品質に関連する業務はほとんど経験させていただきました。
 たとえば全社の品質行政や教育、監査、行政官庁等への報告、法規制対応といった間接的な業務から、工場で生産される品質の見極め、不具合が発生した時の市場・生産対応、品質改善、そしてISOをはじめ各種関連機関の監査対応など、直接的な業務も担当させていただき、貴重な経験を積むことができました。

 最後の3年間は、重度障がい者多数雇用の子会社に出向し、代表取締役社長として、就労支援・定着と会社の経営に携わりました。思い出深い、わくわくした3年間でした。
 この時に人間の可能性や生きていくこと、働くこと、そして喜びや悲しみといった人間の本質を考えさせられ、気づかせてもらいました。新たな価値の創出なども経験できました。また、必然的に会社法や契約・債権についても学び、現在に活かされています。

 人間の可能性の芽を摘み取っているのは、周囲の人間の根拠のない先入観や偏見・固定観念だと気づいたAさんの事例を紹介します。
 Aさんが特別支援学校(高校)の卒業間近のころに担任の先生から、「一生に一度でいいから働くとはどんなことかを経験させたい。卒業したら働く機会はほとんどないと思われるので、1時間でも2時間でも経験させてもらえないか」との相談を受け、半日の実習を計画しました。
 実際に作業に取り組むと、学校関係者の方が今まで見たことがない驚くほどの集中力で作業し、結果、3週間延長の体験実習となりました。与えられた作業を着実にこなす姿から、「戦力になる」と判断し、卒業後、面接や作文を経て入社となりました。
 Aさんは最初、1人で電車に乗れない、買い物もできない、読み書きも苦手でしたが、「働く」ことを通して計算や読み書き、簡単なPC操作、コミュニケーションなどが向上しました。なんと言っても集中力と器用さは抜群でした。
 成長する姿を見るにつれて、人間の可能性の奥深さと働くことの大切さを考えさせられました。そして何より「障がいをお持ちの方にとっての大きな障害の1つは、周囲の先入観ではないか」と、過去の自らの言動を恥じ、一人ひとりと向き合って寄り添うことの大切さを知りました。

 「退職後は、何か前線で社会に貢献できる仕事に就ければ」と思っていたところ、たまたま現職に空きがあり、運良く採用いただきました。

相談員をされていて、やりがいやご苦労されているところは?

高松 相談業務はまったく未経験の分野でしたので、正直戸惑いました。また、当相談室が所管する特定商取引法や割賦販売法などについて、当初は一部分しか理解していなかったので、初日に経験とスキルの両面で著しく不足していることを痛感、落胆しました。
 「このままでは役に立たないどころか、厄介者、粗大ゴミだ」と自覚し、自分でパフォーマンス向上アクションプランを作って当時の課長へ提示し、クオーターごとの面談で進捗と次回取組みを説明するようにしました。
 また、2021年8月からテレワークが強化され、相談員1名体制となりましたが、逆にこれがスキルアップにつながり、よかったですね。

 お問合せの情報は「貴重な1件」と捉えています。お問合せ内容について回答した後に、できる限り当該件名の本質をつかみ、重要な兆しやヒントが潜んでいないのかの視点でお聞きする場合がありますが、聴き取り力と思考力が未熟なので、面倒くさいと思われているだろうなと反省しています。

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