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活躍する消費生活アドバイザー

インバウンドの要望も多いですか。

かとう はい。私は、これからの観光客は丸の内OLとインバウンドだと思っています。自然を求める都会の女子たちにも来てもらいたいですね。
 欧米・アジア問わず、カントリーサイドをみなさん「素敵!」と言ってくれています。
 たとえば、漁師は、天気がいいと昆布を干し場に干します。乾燥したものを一定の長さに切ります。等級に分けます。それをこう食べます。といったところに旅行者は興味があるのです。それに応える「1日体験・昆布漁師になろう」といったプログラムを作りたいと、地元と交渉中です。
 農家だったら、朝露のあるうちにもいだトウモロコシが一番甘いから、朝4時に頭に懐中電灯をつけて畑に行く。その場で生でも食べられるし、湯がいてもいい。そうした特別なプログラムを作っています。
 外国人旅行者は、日本人と違って、癒やされるためではなくて、自分をワンランク上げるために、学ぶために旅行に来ているのですよ。
 以前いっしょに仕事をした「ナショナルジオグラフィック」のカメラマンに「新しいカレンダーを手にしたら、どこで休みを取り、どこに行こうかと考えるのが欧米人だ。誰も知らないユニークな場所と人に会いに行くのが旅の目的だよ」と言われ、ショックを受けました。「まわりの誰も行ったことのないところに行きたいのだから、君たちの地域は価値があるのだよ」とも。
 その言葉を励みに、地域の人たちを説得して、「美しい」「美味しい」だけでなくて、「学び」「食文化」「地産地消100%」を入れていきます。「東洋一の広い育成牧場で乗馬ができるのは日高しかないです」と。
 もちろん日高だけでなく、いろいろな町で「ここしかないのだよ」という価値を指摘します。よそ者であり、世界中をまわっている私が見ても「いいよ!」ということで、地域に自信をもってもらい、商品化させて、ガイドできる人材を育て、その結果をプロモーションする。その繰り返しです。

北海道以外でも、地域資源の掘り起こしは必要ですね。

かとう そうです。発掘のできる人材が地域に必要ですので、そうした人を育てたい。私は、子育て中の女性や転勤族の妻といったフルタイムで働けていない人たちが、特に力になると思っています。
 また、そうして育った人材に、1時間1,000円でも支払う仕組みが必要です。旅行コンシェルジュであれば、ガイド協会をつくって、スキルをブラッシュアップしていくようなシステムと予算、そして場所を地域が用意しないとダメだと思います。

消費生活アドバイザー資格の取得は1993年ですね。きっかけは?

かとう 28歳の時、マーケティング会社で契約社員として調査分析の仕事をさせてもらっていました。取引先の大手広告代理店の部長から、「あなたの感性は素晴らしい。ただ、プランナーとして生きていくには、知識が豊富で論理的な思考ができることをまわりに認めてもらわないと。それには、この資格の勉強をするといいですよ」と言われ、消費生活アドバイザー通信講座の教材を一式いただいたのです。
 それが6月でしたが、私は「よし、受ける!」と決め、猛勉強。無理矢理、一発合格した感じです。子どもが生まれる前だったので、時間に余裕もありました。

 資格を取得後、ジェトロの札幌事務所が開設されるとのことで、そこで採用が決まった矢先、妊娠がわかりました。すごく残念だったけれど、ほかの人に譲りました。その時、よほど悲しい顔をしていたのでしょう。消費生活アドバイザーの先輩が「あなたはまた、違うところに絶対行けるから、家にひきこもらないで」と言って、「商品科学研究所が消費者による論文コンクールを行っているから、それに応募したら」と教えてくれたのです。先輩に「妊娠中のあなたしか書けないものがあるでしょう」と言われたことがヒントになって、札幌中のデパートのベビールームを見て回り、サービスを比較して論文を出したら、優秀賞をもらいました。
 商品科学研究所の論文コンクールには3回応募して、3回とも優秀賞を取り、3回目は最高賞をいただきました。

論文のテーマは、すぐに見つかるものなのですか。

かとう 3回目のテーマはチャイルドシート。自分が不満や課題を感じていたからです。まだ使用が義務づけられる前でしたが、「どうして、みんな使わないのだろう」と思って、子どもと砂場に来ているお母さんたち100人にアンケートを取ったり、メーカーに問い合わせたりして論文を書きました。
 最高賞をいただいたので、東京・池袋での表彰式の写真が毎日新聞や読売新聞に大きく出ちゃいました。1歳8か月の息子をつれ、お腹にも7カ月の子どもがいまして、目立ったのでしょう。ほどなく、チャイルドシートやマタニティウェアのメーカーから「顧問になってください」「アドバイザーになってください」と電話がかかってきました。
 大手出版社からも電話がかかってきて「ライターになってください」と。それでライターになり、書いた特集記事を北海道新聞の社長が読んで、新しく立ち上げる日本初のカーデニング新聞「花新聞ほっかいどう」の編集長に抜擢されました。
 その勤務の初日、私が考えて採用されたキャッチフレーズが、「花が変える 私が変わる 町も変わる」なんですよ。花が自分を変えて、花によって町も変わる。ただきれい、美しいだけではなく、町づくりまで一歩踏み込もうと、当時35歳の「ひよっこ」みたいな私が思っていたことなのですね。
 本当に、消費生活アドバイザーにならなかったら、現在の私はありません。

PRプランナーの資格も取得され、「場活師」でもいらっしゃいますね。

かとう PRプランナーは、シーニックバイウェイ支援センターで広報部長をしていた時に取得しました。シーニックバイウェイ支援センターというのは、地域と行政が連携し、景観や自然環境に配慮し、地域の魅力を道でつなぎながら個性的な地域、美しい環境づくりを目指す施策です。
 その時に、自分は取材して原稿を書いたり、編集はしているけれど、広報のプロにはまだなれていないと思っていたところ、新聞で「PR(パブリックリレーションズ)プランナーという資格ができた」という記事を読み、取得しました。

 場活師は、泉一也さんが提唱した、組織風土を変え、活気に溢れた場をつくる研修の講師です。2007年に東京でのファシリテーター研修会で泉さんに出会い意気投合、数回の学びの後「北の場活師」を名乗っていいということになりました。講師として、「楽しく会議をする方法」などを指導したりしています。

かとうさんの今後の抱負は?

かとう 自分より若い女性の背中を押していきたいです。まちづくり、観光、いろいろな場面で出会った人に「自分の特性を活かして仕事をすると、ストレスもなくて楽しいよ」と伝えていきたい。

 そうした人たちが集まれる場所が欲しいですよね。ジェトロの仕事をあきらめて落ち込んでいた私に、「大丈夫、これをやりなさい」と先輩の消費生活アドバイザーが言ってくれたのも、そうした場所でした。消費生活アドバイザーが集まって勉強会をしていたのです。そういう場所を公的なところが用意してくれることも大事だと思います。
 1人でがんばっていると2人になって、2人でがんばっているといつのまにか4人になる。若い人たちに「とにかく自分が動け。楽しいアロマ、香りを振りまけ」と言っています。「私、がんばっているのだけどつらい」というのではなくて。4人になったら、自治体も「場所を貸してあげるよ」となるかもしれません。
 そして、たとえば毎月1日の6時からこの場所で会議をすると決めたら、「土日でも、雪が降っても必ずやる」。わかりやすい日で、3カ月やっていくと、誰か来ます。
 「続けていくと、誰かが手伝ってくれる」と、私は信じています。

 「消費生活アドバイザーという資格を取りなさい」と言われたところから、私のキャリアが始まっているように、誰と出会うかによってその人の人生が変わります。超エリートでもない、田舎育ちのおばさんだけれど、こうしたことができていることを講演や執筆も含め、伝えていきたいです。
 私が関わった町や企業が結果を出していて、「あそこ元気いいよね」と言われた時に、「実は…」と言うのが、かっこいいかなと思っています。

(取材:2018年5月25日)
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