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資格活用への取組み

「お客様の声」を‘ここちよさ’の追求に活かす

グンゼ株式会社

グンゼ株式会社は1896(明治29)年に地域産業である蚕糸(さんし)業の振興を目的とし、「郡の正しい方針」を意味する「郡是」を社名として設立された。この精神は今に引き継がれ、CSR活動にも積極的に取り組んでいる。2002(平成14)年度には通商産業大臣(現経済産業大臣)より消費者志向優良企業として表彰(総合表彰)されている。

■週報を情報交換ツールに

 「お客様の声」を週報や月報などにまとめ、社内のイントラネットで発信している企業は多い。しかし、発信元のお客様対応部門では、どれだけ見られているのか手ごたえを感じられないのが実情ではないだろうか。

 これを解決すべく、昨年、グンゼのお客様相談室ではイントラネットによる週報の内容を刷新、グラフや数字で示す分析に加え、お客様の「生の声」をふんだんに盛り込むようにした。

 その内容を金森弘室長は「パッと見たときに必要なところがすぐにわかるようにしました。その週の特徴をトピックスとしてまとめ、スクロールしていけばさらに詳しいデータが見られます。該当商品に直接かかわっていない社員も興味がもてるよう心がけています」と語る。

 発信項目には、売り場や商品についての問合せやクレーム、要望、それにお礼も入れている。「この商品のこういうところがよかった」というお客様の声は、商品開発担当にとっては何よりの喜びであろう。社員のモチベーションアップに貢献できる。

 この週報システムの改革がスタートしたのは、3年ほど前。全通話録音ができるデータベースシステムの導入時に見直しを始め、改修を重ねて現在のスタイルになった。

 週報システムづくりの中心となった同室マネージャーの柳澤尚子さんは「最初のシステムは、字数の関係でお客様の声をかなり要約しなければならず、不便だったんです。私たちが電話でうかがっているようなお客様の生の声を発信するには、声を入力する枠づくりから始めなければならず、パッケージソフトの改良に時間がかかりました」

 内容の検討には、商品開発部門の担当者などにも参加してもらい、どのようなデータが欲しいかといったヒアリングをした。

 「最近は他部署から、『週報に出ていた件について詳しく教えてほしい』『こういう商品を紹介してはどうか』といった情報交換が活発になりつつあります。でも今はまだ、ようやく見てもらえるようになったという段階。さらに使いやすいものにしていく予定です」(柳澤さん)

■社内への問合せは間髪入れずに

 同社お客様相談室は総勢10人で、グンゼグループ全体のお客様に対応している。グループにはインナーウェアやレッグウェアなどを扱うアパレルカンパニーのほか、繊維資材事業部、プラスチックカンパニーなどB to Bの部署もある。商品に付されているフリーダイヤルには同相談室ですべて対応、専門的な内容は、ここを窓口として担当事業部へとつながれる。同相談室は社長直轄の部署であり、事業部から独立していることから、どの部署に対してもモノが言いやすい位置にある。

 お客様の声は、フリーダイヤル、FAX、郵便、インターネットなどを通じて寄せられ、2011年は約26,000件であった。9割がフリーダイヤルで、残りのうち8%がホームページを経由するものである。

 季節による変動は、主力商品が肌着ということで、夏物への切替え時期の6月と、保温肌着の問合せが多い11月に電話件数がやや増加するが、年間を通して大きな増減はないそうである。男女比は、ほぼ半々。近年は年配の男性が増加している。

 内容は、「どこで買えますか」といった売り場の問合せが最も多く44%、次いで商品の機能・取扱い方法についてが27%、クレームが12%、要望・意見が6%などとなっている(2011年)。

 たとえば売り場について問合せがあった場合、該当商品の販売担当部署に「間髪入れずに」(金森室長)話し、情報収集にあたる。同社の販売チャネルは、百貨店、量販店、専門店、ドラッグストア、そして代理店を通じての小売店など多様である。どこの販売担当者に聞くかを電話の内容から判断し、お客様の住まいに近い店舗をできるだけ調べて回答する。

 販促キャンペーンについてのお客様からの問合せに伴って、担当部署とのやりとりが増加してからは、キャンペーン前に同相談室に告知用キット一式が届くようになったそうである。

 「週報の発信も含めて、お客様相談室の認知度が上がり、うまく連携がとれるようになってきたと思います。まずは、こちらから積極的にコミュニケーションすることです」(金森室長)

 クレームの場合は、お客様から商品を送ってもらい、そのアイテムを担当する品質管理部門が調査し、回答書を作成。それをお客様相談室がお客様のお申し出に沿った回答かどうかを再確認したうえで、お客様に発送する。品質管理部門は、現象の原因によっては、企画開発部門に問題を伝える。ここでの追求が新商品開発につながることもある。

 たとえば、襟に縫い付けられている品質表示タグについて「肌にあたってチクチクして不快」とのお客様の声が多数寄せられていた。そのやりとりのなかから、肌にあたる部分をなくした転写プリント仕様の品質表示タグが誕生している。

■商品を試着し、お客様にアドバイス

 肌着は毎年、新たな素材・機能が加わった商品が発売されるため、つねに商品知識をアップデートする必要がある。そのため、同相談室では、シーズンごとの新商品を紹介する展示会に室員も必ず行くようにしている。また、春夏物のシーズン前と秋冬物のシーズン前の2回、商品についての勉強会を実施している。

 さらに、商品サンプルを相談室員が手分けして試着し、着心地についてレポートをまとめ、報告し合うミーティングも行っている。「こういう商品ですよ、といったことを室員で共有しています。お客様に実体験に基づいたアドバイスをすることができます」(柳澤さん)

 同社が2012年10月に定めた「グンゼブランド憲章」には、「お客さま起点で‘ここち品質’を追求します」と書かれている。

 メーカーは、ともすれば「作り手」視点になり、起点も作り手に傾きがちである。そうならないためにグンゼというコーポレートブランドを再構築しようという全社的なプロジェクトが組まれ、まとめられた。各事業部から横断的に40人ほどが研修所に集まり、共感をすり合わせながらボトムアップで作り上げたものという。

 「『お客さま起点』とするには、自社商品だけでなく、幅広い、社会一般の知識が必要です。そういう意味では、消費生活アドバイザー資格取得を目指す勉強が役に立つのではないでしょうか。当相談室も基本的には全室員取得を目指したいと思います」(金森室長)(取材:2012年12月7日)

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