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活躍する消費生活アドバイザー

最初に仕事に就かれたころとは、コンタクトセンターは大きく変化しているのではないでしょうか。

小林 そうですね。1社目に入社した1990年代後半は「コールセンター」いう言葉は、まだ一般的ではありませんでした。社外の方に自分の仕事を説明する時は「コールセンターってご存知ですか? 通販の電話を受けたりする所をそう呼びます」という言い方をしていた記憶があります。私が入社した当時は、コールセンターと呼んではいても、普通のオフィス用電話機で電話を受けていた会社も少なくなかったのではないでしょうか。
 その後、「コールセンター」という呼び方が社会に浸透しました。海外からオペレーションフレームワークも入ってきましたし、IT化も進みました。問合せ手段も電話だけではなくメールやチャット等にも広がったことから、最近は「コンタクトセンター」という呼び方もされるようになっています。

 外資系企業を担当した時は、US本社と直接やりとりをする機会も多く、グローバルのマネジメントに直接ふれることができて、非常に刺激を受けました。日本のコンタクトセンターのマネジメントはコミュニケーションやチームワークを重視しますが、グローバルマネジメントが価値を置くのはメソドロジー(methodology:方法論)です。結果だけではなくプロセスを重視し、徹底的に数値化します。共通語は英語(だけ)ではなく、「数字」でした。日本とグローバルの良いところを組み合わせたマネジメントスタイルを作り上げたいと試行錯誤をしていました。

 また、コンタクトセンター業界では2000年前後からコンタクトセンターの地方化が進みました。
 私自身、愛媛県や福岡県に常駐した経験もあります。地域ごとにそれぞれ特徴があり、その特徴を活かしたマネジメントをしていくことを意識していました。
 地方コンタクトセンターでは幅広い世代が働いていますが、特に若い人達が成長していく姿を見ているのは楽しかったです。地域に貢献できる人材を育てられる場所になりたいと考えていました。

コンタクトセンターの現状について、ご意見をうかがいたいです。

小林 コンタクトセンターは「経営に貢献する部署」と定義されるようになりつつはあるものの、やはりまだ日本においては社会的地位は低いと感じています。
 コンタクトセンターに限らず、全般的に日本のサービスのレベルは高いのですが、お客様の最前線に立つ社員に負荷をかけていることも多いのではないでしょうか。
 「お客様は必ずしも神様ではない」ということを企業とお客様が理解し、サービス提供者に対して敬意をもち、「過剰サービス」ではなく「適正サービス」が実現する社会になればよいと考えています。

 とはいえ、何が過剰サービスで何が適正サービスかは元々の商品・サービスの価格にも拠りますので、一概には定義できません。
 最近はネットの口コミで商品・サービスを決める人が多くなっていますが、たとえば旅行予約サイトで、「その価格帯のホテルでそこまで求めても無理だよね」という書き込みをする人もいます。ホテル側が「この価格ではそこまでサービスは提供できません」と言い切ってくれるようになればよいのですが、すぐには難しそうです。口コミを読む側が口コミの妥当性を判断していくしかありません。
 また「適正サービス」という観点からは、数年前から百貨店等が年末年始に休業するようになったのは、とても良いことだと思っています。
 私が担当していたクライアントのなかにも、電話オペレーターやSVのことを考えて、センターの休業日を設定したり、終了時間を早めたクライアントもいました。そのことが顧客満足度を大きく引き下げた、ということもありませんでした。

コンタクトセンターの今後について、どのように見ていらっしゃいますか。

小林 “ビジネス書”的には「企業がCX(顧客体験)を重視するようになるなか、コンタクトセンターはますます重要な役割を果たすようになる」という回答となります。
 しかし、重要な役割を担っているはずの電話オペレーターの待遇は必ずしも良いとはいえませんし、実態とのギャップがあります。コンタクトセンター業界として自分達の価値を発信して改善に取り組んでいく必要があると考えています。

 が、ここまでは誰でも言っていることですので(笑)、私ならではの意見も付け加えさせていただきます。
 「日本のサービス業の生産性は低い」といわれています。この評価に対しての意見もあるとは思いますが、ここでは生産性に限定して話をしますと、生産性向上のためには「数値化」と「IT化」が必要です。コンタクトセンター業界は既にどちらも実現できています。
 コンタクトセンターが日本のサービス業の生産性向上の牽引役になれるのではないか? コンタクトセンターで実践していることを他業界に転用できるのではないか? と思っています。

 またコンタクトセンターは、比較的歴史の浅い業界です。キャリア形成の可能性があまり知られていないように思います。
 たとえば、仕事のブランクがあったり職務経験がない人が電話オペレーターとしてアルバイトで入社して、成果を出してSVになり、正社員に登用されてマネージャーになったというケースも少なくありません。キャリアの作り直しのチャンスもあります。
 このような「コンタクトセンターの可能性」をもっと広く訴求していくことで、コンタクトセンターの社会的地位を高めていくことができないかと考えています。

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