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活躍する消費生活アドバイザー

井上 洋一さん

縦割り化した現代社会に横串を通す資格。視野が広がります。

井上 洋一さん(消費生活アドバイザー34期)
愛三西尾法律事務所 弁護士

弁護士としての裁判実務の経験を軸に、消費生活アドバイザーを含めた100を超える多数の分野別資格のスキルを活用することで、専門性の高いリーガルサービスを提供している。また、消費者問題から労働問題等、幅広い対象に向けての講演やセミナーを行っている。 趣味は資格の勉強。モットーは「どんな袋小路に陥っても、人生はやり直せる」。

弁護士でいらっしゃいますが、どのようなお仕事が多いのでしょうか。

井上 愛知県三河地域での地域密着型の法律事務所、いわゆる町弁事務所で仕事をしています。

 もともとは、労働事件での会社側や交通事故事件での損害保険会社側といった企業側の弁護を担当していました。解雇やコストカットなどのほか、クレーマー対策や反社会的勢力の対策といった、いわゆる荒っぽい仕事が多かったですね。
 現在は、離婚や相続、債務整理、成年後見といった一般的な民事事件、刑事事件を幅広く扱っています。

 弁護士になって、法律という眼鏡を使って社会を見ることができるようになり、物事がよく見えるようになりました。ただ、その一方で、「職業法律家」になればなるほど、視野が狭くなっていくようにも感じています。法律家は、法律の方法に囚われてしまっているのではないかと。
 弁護士は、すぐに「法的には〇〇です」と言って、権利や義務という視点に還元してしまいがちですが、それだけでは、私たちの社会が暮らしやすくなるには不十分なのではないかと思っています。

 たとえば、法律は、処罰するとか断ち切るという、父性的な原理に基づいています。しかし、トラブルを円満に解決したり、予防したりしていくには、そうした父性的な対応だけでなく、傾聴したり受容したりといった母性的な対応も重要なわけです。

 最近は、法律家のような厳しいことを言う人が増えた気がしています。権利意識が向上したのは喜ばしいことではありますが、半面、法的な考え方だけでは、大事なことを見落としてしまうのではないか。北風のような、法的な対応が必要なことも、もちろんあるのですけれど、暖かい太陽も必要ではないか。そう感じて仕事をしている、今日この頃です。

100を超える資格を目指された理由は?

井上 二つの面があるように思います。
 一面としては、たくさん手段があったほうが、「救われるはず」と思ったことです。私自身の不安や迷いの現れのような気もします。
 たとえば、かつて私がかかわった非行少年から「先生に教えてもらった電気工事士の資格を少年院で取りました。いまはエアコンの取付けの仕事をしてがんばっています」といった報告をもらったりすると、私自身も、すごく救われた気がするんですね。
 この世が生きづらいという人は、どうしてもいます。空気が読めない、うまくふるまえない。そうして袋小路に迷い込んでしまう。世代的にも、私たち就職氷河期世代は、そういう人が多くなってしまう。私自身に近い問題でもあるでしょう。
 生きづらさをかかえる人が、どうすれば生きていけるか、また道を踏み外した人たちが、どうすればやりなおせるか。そこへの思いが、根っこにあります。
 その方法の一つが、知識やスキルを身に着けて、この社会と向き合う力を手に入れること、すなわち資格の取得だと思います。

 もう一つの面は、アイデンティティでしょうか。この言葉が妥当かどうかわからないですが、「アイデンティティは、一つでなくてもいいのではないか」という、ささやかな問いかけですね。
 社会的には、しばしば、弁護士とか会社員、男とか女とか、レッテルを貼られて判断されますけれど、人の役割は一つと決められたわけではないはず。一つの道でうまくいかなければ、ほかの道をいけばいいわけです。
 私はこれを、よくジャンケンにたとえます。ジャンケンしたときにグーばかりずっと出す人はいないでしょう。同じ手ばかりだしていたら、いいカモになるだけです。ところが人生や人間関係では、グーばかり出しつづけてつまづき、思い悩んでいる人が実に多い気がします。「自分はグーしか出してはいけないんだ」と思いこみ、グーばかり出しつづけ、「どうしていつもうまくいかないんだろう」と、苦しんでいる。
 しかし、人生というジャンケンでは、後出しも反則ではありません。相手の手を見て、チョキやパーを出しても、別にかまわない。一つのカードで負けても、ほかの手札を切ればいいわけです。そういうふうに考えていたほうが気楽で、幸せに生きられるでしょう。
 そういうことから、たくさん資格を取ったのかもしれません。

弁護士 井上洋一の資格道〜108の資格を目指して〜」というブログも、発信していらっしゃいます。

井上 108の資格を取れば、私の煩悩もなくなって、「悟りが開けるかも」と思ったのですが、もちろん、そうはいかないですね。現在107です。
 これからは、資格を活用していくことにも積極的にトライしたいと思っています。

 私は、中央労働災害防止協会の中部相談委員会副会長を務めたり、昨年からは、産業保健法学研究会のメンタルヘルス法務主任者資格試験の運営委員をしています。そうした、法と経営、法と心理といった複合領域にかかわり、その活性化や団体の運営に携わっていきたいですね。
 複合領域にするのは、たくさん資格を取得する理由と同じで、自分自身の幸せがなくならないように、また幸せがなくなって苦しんでいる人たちに「一つの分野だけじゃないよ」と知らせたいからでもあります。

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