TOP > 消費生活アドバイザー > 資格活用事例 > 活躍する消費生活アドバイザー > 石倉さん インタビュー記事2

活躍する消費生活アドバイザー

事故や損害が発生する状況はそれぞれ異なりますから、お客さまのご意見・ご要望への対応が難しい面もあるかと。

石倉 そうですね。損害保険は加入する時には形が見えにくく、事故が起こってはじめて商品が具体的な形になります。そのため、お客さまの加入時の期待度と事故時のギャップが起こりやすいです。
 期待していたものとの違いやギャップが、お客さまのご意見やご要望として出てくるのではないかと思っています。

どのようなご意見・ご要望が多いですか。

石倉 数年前から自動車事故を起こして保険を使うと、翌年以降の保険料が大幅に上がるようになりました。そこに対するご要望はとても多いですね。ともすると、保険を使わないで自己負担したほうが、翌年度以降の保険料を考えると安かったりします。そうなりますと、そもそも何のための保険なのか、というご意見が出てきますよね。

 また、事故が起こった場合、お客さまと保険会社、代理店である当社のほかに、事故の相手の方や関係者がいますから、問題が複雑になります。
 すべて保険が解決してくれると思われているお客さまもいらっしゃいますが、必ずしもそうではありません。保険には解決を提供できる部分と提供できない部分が、どうしてもあります。そこを、きちんとわかりやすく説明し、対応を一緒に考え、お願いすることはお願いし、安心していただくことが私の仕事で、保険会社とお客さまとの間のギャップをできるだけ埋め合わせていくことが代理店の存在意義かなと思っています。お客さまは保険については素人であるにもかかわらず、保険会社が専門的な言葉で説明することもありますし、保険会社としては踏み込むことが難しい事項もあったりしますから。
 そのうえで、よい結果を引き出せれば、お客さまも、保険会社も、私たち代理店も、みんな幸せになるのではないでしょうか。

消費者にわかりやすい損害保険になってほしいですね。

石倉 消費者の目線で視ると、損害保険はわかりにくいです。今は、インターネットの比較サイトなども出ていますけれども、まだわかりにくい。
 実際のところ、サイトは利点もたくさんありますが、よく注意しないと判断を誤ることがあります。損害保険はお客さま一人ひとり、加入目的や状況、事故対応についての考え方などが違いますので、金額だけを横並びで比較することにあまり意味がないかと。
 保険会社によって補償範囲や補償内容に多少違いがありますし、またあえて違いをつけていることも多く、少し契約条件を変えただけで保険料は簡単に動きます。

 おそらく、保険の契約にあたって、「自分は事故を起こさない」「事故に遭わない」という前提で考える人は、保険料のほうに目がいくでしょうし、「事故は起こる」という前提で考える人や事故を何度か経験した人は補償の中身に目がいくでしょう。その違いを単純比較するのは難しいです。

 もう一つ、私は、保険会社は保険金の支払いだけではなく、保険事故が発生した時に解決していく、そのプロセスも販売していると思うのです。
 たとえば自動車事故であれば、相手の損害をどのように解決していくのかというプロセス。火災保険であれば、焼失した物の復旧までの段取りをどのように進めていくのかというプロセス。
 お客さまは、すぐにでも保険金の支払いを受けたいわけですが、そのプロセスは素人にはわかりにくいうえ、保険会社によっても多少違います。解決方針や手順、スピードや手続き方法も全く同じというものではありません。私は保険会社の文化の違いがあると呼んでいますが、これをサイトで単純に比べることはできないと思います。
 損害保険、特に事故対応においては、どれだけ多くの解決方法を提示できるか、その選択肢やノウハウの豊かさも大事だと思っています。

 時には私も営業にかかわることもありますが、事故が起こることを前提に、お客さまにとって最適の保険を考えるようにしています。「出口からの保険提案」が私の売りです。
 ただ、事故が起こることを想定していただけないと、なかなかご理解していただけないこともあります。

消費生活アドバイザー資格は、前職を退職される前に取得されたのですか。

石倉 そうです。40代半ばに管理的業務から実務的業務へ職務転換し、火災保険や賠償保険の損害サービスの専門部署に異動しました。
 そうしましたら、あらためて保険という商品が面白くなったんです。勉強したいことがたくさん出てきました。民間の保険に携わるなら公的な保険も知らなければと、まず社会保険労務士を取得、次に火災保険を担当していると不動産の知識が必要になるので宅地建物取引士、さらにマンション保険を集中的に担当していた時期があったことから管理業務主任者も取得しました。

 消費生活アドバイザー資格は、東日本大震災がきっかけです。
 震災後、問題のある業者が事故や災害でもないのに「火災保険で修理費を出せます」と住宅のリフォームをお客さまにもちかけ、保険請求をさせるというトラブルが続出しました。
 お客さまに訪問や電話をしてきて、「火災保険で修理できるので無料で保険申請を手伝います」と言って、勝手に修理契約をしてしまう。全国的に高額の見積書が保険会社に多数出され、保険会社は対応に追われました。
 そういう業者はおそらく、たとえば100万円の見積書を提出して、お客さまに「修理費として60万円が認められた」などと言って、修理費を支払わせて実際の修理は5〜6万円ですませたり、極端な場合は修理をしなかったり、高額な解約料を取ったりしていたのではないでしょうか。
 こういう、本来支払うべきでない支払いは、お客さまの不利益にもつながりますし、保険業界が保険料を値上げする原因にもなりかねません。
 しかし、保険会社が「お支払いできないのですよ。お客さまは業者さんにだまされていますよ」とお伝えせざるを得ないこともあるのですけれども、お客さまから見ると利害関係が対立する保険会社の話は、なかなか聞いてもらえないのですね。

 その時、私は国民生活センターが出しているチラシや記事を利用させていただき、「こういう業者さんが出てきているので注意してください」と説明したり、「消費生活センターに相談してみては」と案内したりしていました。

 お客さまがいろいろな場面でだまされている、不利益なことをされているとわかり、消費者問題について関心をもつようになりました。そこで、消費者関係の資格を探して消費生活アドバイザー資格を見つけ、勉強をスタートしました。早期退職する直前に受験し、合格することができました。

▲TOP