TOP > 消費生活アドバイザー > 資格活用事例 > 活躍する消費生活アドバイザー > 畑野さん インタビュー記事2

活躍する消費生活アドバイザー

現在、力を注いでいる取組みにはどのようなものがありますか。

畑野 3つ紹介させていただきます。

 一つ目は、「営業秘密」です。
 この3月、(株)東芝の半導体メモリーに関する情報を同社の提携先の元社員が韓国のライバル企業に漏らした疑いがあるとして、不正競争防止法違反の疑いで逮捕されました。
 この元社員は、韓国のSKハイニックスという会社にヘッドハントされたのですが、転職に際して、東芝が開発した営業秘密にあたる研究データを不正にコピーして渡していた容疑がもたれています。営業秘密の漏えいは、不正競争防止法違反にあたります。
 また、東芝はSKハイニックスに損害賠償請求訴訟も起こしたと聞いています。

 この事件が一つの契機となり、社内における営業秘密情報の保護を一層強化しなければならないという動きが加速化してきました。

 これは不正競争防止法を所管している経済産業省の仕事ですけれども、同省がしっかりと取り組むよう当事務局もサポートしていきたいと思っています。

 二つ目は、特許法関連です。「職務発明」という言葉を聞いたことがありますか。
 約10年前の青色発光ダイオードの発明を巡る訴訟で、この言葉を新聞などマスコミでも見かけるようになったと思います。

 発明をすると、特許を受ける権利は発明者に帰属します。発明者は、まったくの個人であることもあれば、会社の従業員であるケースもあります。会社の従業員などによる職務上の発明のことを職務発明といいます。職務発明であっても、特許を受ける権利はまずは従業者である研究者に帰属しますが、通常は、研究者から会社に譲渡されます。その代わりに、会社は研究者に適切な対価を払うことになっています。

 その対価の金額を巡って訴訟が起こされる場合があります。青色発光ダイオードの訴訟の場合は、一審では、日亜化学工業(株)が発明者に対し約200億円の対価を支払うべきという判決が出ました。
 その後、控訴審で、約6億円(延滞金を含めると約8億円)で両者が和解しました。

 職務発明に係る対価を巡る訴訟が相次ぐなか、職務発明については、会社で生まれた発明なのだから、特許を受ける権利は研究者ではなく会社に帰属させるべきではないかという議論が出てきました。もちろん、仮にこのような扱いとなった場合でも、研究者の意欲が失われないように配慮していくことが重要なことは言うまでもありません。
 昨年策定した「知的財産政策ビジョン」でも職務発明の見直しの必要性について触れられており、現在、特許庁が中心となって検討しているところです。

 三つ目はクールジャパン関連です。
 昨年11月、経済産業省が主導し、官民出資による「(株)海外需要開拓支援機構(クールジャパン推進機構)」が立ち上がりました。
 日本の伝統や食などの生活文化、ファッション、アニメ、ゲームなどを手がける企業の海外展開を支援することを目的とする組織です。
 国が約300億円、民間企業が約100億円、計約400億円の官民ファンドができあがり、もうすぐ第一号案件がスタートします。

 また、海外で日本のコンテンツをもっと見てもらうために、日本のテレビ番組を専門に放送するチャンネル枠の確保を目的とする団体も、商社や放送会社等が音頭をとって立ち上がりました。

 さらに、日本の放送コンテンツを海外で展開するにあたって、著作権法など制度がネックになっているところもありますので、その解決にも取り組んでいます。
 たとえば現状では、放送番組をDVDなどに録画して海外で販売する場合には、出演者や音源制作者など、関係者すべての著作権や著作隣接権の使用許諾を得ないと販売できないことになっています。
 これでは時間も費用もかかってしまうため、結果として海賊版がはびこる原因となっています。
 こうした仕組みの見直しも大きな課題となっています。

参事官としての、畑野さんの役割というのは?

畑野 事務局全体の総括業務を担当しています。参事官というのは、省庁でいえば課長職に相当する役職です。

 具体的には、職員に適切に指示をし、職員に作ってもらう資料やレポートなどをわかりやすい形に整え、事務局内の上司や大臣など政務三役に説明し、あるいは、議論させていただくことです。

 事務局の職員は、私の指示に基づいて、専門家や企業の方、各省庁と議論し、意見をうかがい、専門委員会などで発表する、政策のもととなる資料を作成するわけです。

 職員が非常に優秀ですので、「こういう形で検討してみてください」と伝えれば、一級品のアウトプットができ上がってきます。

 また、大変ありがたいことに、国会議員の先生方のなかにも知的財産戦略に大きな関心をもたれている方がたくさんいらっしゃいます。
 国会議員の先生方との議論の窓口役も重要な仕事の一つです。

取組みには、スピードも要求されますね。

畑野 そうですね。
 内閣官房の組織というのは、どこも同じだと思いますが、普通の役所と比較して、政務三役との距離感が大変近いと思います。スピーディな政策展開に醍醐味を感じていますが、それだけ責任も大きいと思います。

▲TOP